黒炎の蛇と疑問

 ここはエルラスタの鉱山の中。クルテルが放った魔法により、洞窟内が激しく揺れ徐々に岩壁が崩れ始めていた。


 クルテルは何とか制御しようと試みるが、思うようにいかず苦しんでいた。


「クッ、このままでは、ハァハァ、私がオーバーヒートするだけではなく、この洞窟が崩壊してしまいます。」


 暴走し激しく飛び交う龍形の岩石の攻撃を、ラザリオは斧で薙ぎ払っていたが、余りにも動きが素早く威力があり交わしきれずにいた。


「グハッ!この魔法をどうにかしなければ……ハァハァ、流石の俺でもこの威力と数をこなすのは困難だ!」


 要はどう攻撃するかを考えながら、ラザリオに気付かれないよう近付いていった。


「このままじゃ、クルテルが……それに、洞窟が崩壊する。どうにかしないと。いったいどんな炎を作りだしたらいい?漆黒の炎といえば、あれしか思い浮かばない。」


(……ここで考えててもどうする事も出来ない、やれるか分からないけど、一か八かとりあえずやってみるか!)


 要は右の掌を見ながら漆黒の炎をイメージした。すると掌の上に漆黒の炎が浮かび上がってきた。


 そして要は左手の指を軽く額に添え目蓋を閉じると、更にその漆黒の炎の形や威力や攻撃のイメージをした。


 イメージがまとまると要の右の掌の漆黒の炎は徐々に大きくなっていき、左手を添え更に大きくした。


 その漆黒の炎は凍てつく様な禍々しいオーラを発していた。


「流石に、この炎は自分でも怖いくらいなんだけど。ちょっとイメージ濃すぎたかな?でも、これを外したら後どうなるか分からないしな。とりあえずこの炎をラザリオに当てないと。」


 そう言うと掌の漆黒の炎を頭上に掲げ更にどう攻撃するかをイメージし、


「漆黒の闇なる炎よ 蛇となり喰らい尽くせ!!」


(てか、俺は何を言ってるんだ……。いくらイメージを作り出す為だとしても。はぁ、まぁ言っちゃったしな。でも、ここに涼香がいなくて良かった。)


 その漆黒の炎は禍々しいオーラを発しながら蛇形に変化していった。そして要の掌から数体の蛇形の漆黒の炎がラザリオ目掛け放たれた。


 ラザリオは龍形の岩石を斧で薙ぎ払っていたが、右方向から今まで感じた事のない様な禍々しいモノが、自分の方に迫ってきている事に気付いた。


 そしてそれをラザリオは横目でチラッと見ると、


「な、なんだ!?この感じは?それも黒い炎だと!あり得ん!!だが、炎には違いない。それなら!」


 ラザリオは龍形の岩石の攻撃よりも、今まで感じた事のないこの蛇形の漆黒の炎を脅威に感じ、咄嗟に襲いくる蛇形の漆黒の炎を斧で薙ぎ払った。


 だが、その数体の蛇形の漆黒の炎は斧をするりとすり抜けていき、目の前までくると牙を剥き出しにしラザリオを締め付け噛み付いていった。


「グハッ!なんだこの炎はぁ〜……し、信じられん熱くない炎だと!?ハァハァ、この炎は闇属性か!それもこの炎は、俺の力をどんどん奪っていく。このままでは不味い、何とかしなくては!」


 クルテルは苦しみながら、ラザリオに今何が起きているのかみていた。


「ハァハァ、これはいったい何が起きたというのでしょうか?この禍々しい漆黒の炎を誰が……。」


 そう言いながらクルテルは、その漆黒の炎が放たれたと思われる方を見ると、そこには要が頭上に両掌を掲げ更に次々と漆黒の炎を作り出し蛇形の漆黒の炎を放っていた。


「クッ、ハァハァ、流石に慣れない事してるせいか、疲れてきたんだけど。イメージし過ぎたせいかもだけど、まだこの力の加減が分からない。」


 要はいきなり大量の力を使ってしまった為、苦しくなってきていた。


 ラザリオは龍形の岩石の攻撃と蛇形の漆黒の炎の攻撃をまともに受けながら、何とか引き剥がそうと身体全体を使い暴れていた。


 するとラザリオは龍形の岩石の魔法の威力がだんだん弱くなってきているのに気が付いた。


(これは!どうなっている?何故クルテルが放った魔法が徐々に弱くなっているのだ?)


 そしてクルテルも自分の魔力がどんどん弱くなってきている事に気付き、


(ハァハァ、これはどういう事なのでしょうか?何故私の魔力が……。)


 そう思いながらクルテルは要がいる方をみた。すると、その先にいる筈のユリナシア達がいない事に気付いた。


(なるほど、そういう事ですか。私の暴走を止める為に……バルロス様がいなければ魔法が使えません。だからわざとここを離れた訳ですね。でも、それでは不味いのです。今すぐでは無いかも知れません。ですが、このままではいずれ涼香とバルロス様の事を知られてしまう……。)


 そしてクルテルはこの場をどうするか考えていた。


 要は更にラザリオを蛇形の漆黒の炎で攻撃し続けた。


 ラザリオは蛇形の漆黒の炎を打ち消そうとひたすら、叩き落としたり引き剥がしたりと悪戦苦闘していた。


 そして、飛び交っていた龍形の岩石は徐々に揺れと共に収まってきていた。


 要はそれを確認すると更にイメージし頭上に掲げている両掌の漆黒の炎を宙に浮かせた。するとその漆黒の炎は更に膨れ巨大な漆黒の炎の玉になった。


 その巨大な漆黒の炎の玉をラザリオ目掛け放った。と同時に要はクルテル目掛け駆け出した。


 ラザリオはそれに気付いたが、蛇形の漆黒の炎の攻撃を受け身動きが思うように取れず、巨大な漆黒の炎の玉をまともに喰らった。


 そしてラザリオの全身を巨大な漆黒の炎が覆いつくし、


「うわぁぁ〜!クッ、よ、よくもぉ〜……!?」


 ラザリオは頭を抱えうずくまり身体の力が抜けていき動こうとしても動けず喘いでいた。


 クルテルはラザリオのその光景をみた後、自分の方に向かってきている要をみた。


「この炎はいったい!?それより何故、要はラザリオの方ではなく私の方に向かってきているのでしょうか?」

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