漆黒の炎
クルテルの魔力は徐々に上昇していた。そして、クルテルは両手を上に翳し魔法陣を描き始めていた。
(ふぅ、さてどうなることやら。ここまで来たらもう後には引けませんね。)
(クルテル。何をするつもりだ?……ん?魔力が異常に上昇している。まさか、これがクルテルの体内に蓄積していた魔力量。いやそれだけではない。これは恐らく手にしているアクアリュウムの影響。そうなると厄介だな。この詠唱をやめさせねば……。)
ラザリオはクルテルを警戒しながらどう動くか考えていた。
(いや、ちょっとまてよく考えろ。何故制御せずに魔力を上昇させている?下手をすればオーバーヒートしてしまい自分の命も危ういはず。それにそれだけではなくこの洞窟さえも崩壊してしまう。なのに何故……まさかこの洞窟ごと俺を生き埋めに……いやそれも違う。いったい何を考えている!)
ラザリオはクルテルを警戒しながら洞窟内を見渡した後、攻撃を仕掛けた。
クルテルは魔法陣を描き終えると詠唱を唱え始めた。
「地に生命宿りし者 芽吹き生い茂り伸び 蛇の如く絡みつき締めつけよ」
《地神 蛇蔦の陣!!》
と、クルテルは詠唱を唱えた。すると半径約20mの範囲が小刻みに揺れ、上下横と至る所の地を割りミルミル内に芽吹き成長し蔦となると、クルテルは上に翳していた両手をラザリオに向けた。
その無数の蔦は蛇の如く地を這い、頭上からは真下へと伸び、ラザリオの直ぐ側まできていた。
ラザリオはクルテルを攻撃しようとしていた。だが、蔦がまるで生きているかの如くゆく手を阻み、斧で切っても切っても直ぐに生え襲ってきていた。
「クッ、何なんだ!キリがない。」
(クルテル。何を考えている?これは地の魔法でも植物系。俺が炎で焼いてしまえばそれまでだ。だが、もしこれがフェイクだとして……いや待て!まさかやはりこれはフェイク。今すぐ炎で焼いてしまわねば。クソッ!考え過ぎた。単純な事だと言うのに。)
ラザリオは斧に炎を纏い薙ぎ払っていった。
「間に合うか!」
そうクルテルは既にラザリオの真下目掛け手を翳し次の詠唱を唱え始めていた。
「父なる大地 強固たる岩石 翳したる調べに集い型取り 龍のが如く飛び舞い飛び交え」
《地神 龍翔岩の陣!!》
ラザリオの真下が徐々に揺れ地面が隆起してくると、魔法陣が浮かび上がってきた。クルテルはそれを確認し翳していた手を退けると、半径約20mの範囲がグラグラと更に揺れ出し勢い良く大量の岩石が舞い上がり龍形を型取りながら上昇していった。
ラザリオは慌てて炎の魔法を解除し避けようとしていたが、反対側から別の龍形の岩石が向かってきている事に気付き斧で薙ぎ払った。
だが、四方八方から龍形の岩石が飛び交いラザリオに当たり、その龍形の岩石は生きているかの如く……いや暴走してしまい、ラザリオだけではなく洞窟内を無数の龍形の岩石が飛びかうように暴れ出した。
(ハァハァ、流石に身体がもたない。まだ魔力が上昇し続けている。それに魔力が制御できないせいか、魔法が暴走してしまいました。このままではラザリオだけではなく、ユリナシア様達にまで被害が及んでしまいます。何とかしなくては。)
クルテルは身体中に熱を持ち始め汗を掻いていた。
ラザリオは襲いくる龍形の岩石を斧で薙ぎ払っていった。
「な、なんて重く固いんだ!それにこんな威力のある岩石は初めてだ!かわすのが精一杯だ。」
クルテルは放った龍形の岩石の動きを見ていた。
(これは、アクアリュウムの原石に魔法が反応しているのでしょうか。)
クルテルがそう考えていると、更に地から無数の岩石が龍が如く舞い上がり攻撃し続けた。
そして、洞窟内のアクアリュウムの原石に反応し暴れ、辺りには地響きと岩が崩れ始めていた。
時間は遡り、ほんの数分前の事。要は自分の能力について考えていた。
(炎をイメージするって言っても、普通の炎しか思いつかないしなぁ。ん〜他の炎かぁ。想像できないわけじゃないけど。まさかアニメやゲームじゃないだろうし。それに実際この炎が出るかどうかなんだよな。でも、試してみるか。)
要は試しに今までとは違う炎をイメージしてみた。そう赤い炎ではなく漆黒の炎をイメージしたのだ。
そして右手を前に出し掌に炎を纏わせると、そこには漆黒の炎が現れた。
「……!?」
それを見た要は驚きポカンと口が開いたままになった。そうまさか本当に漆黒の炎が現れるとは思わなかったからだ。
それを見た
「……なるほど、これは興味深い。熱くない炎とはな。ただ、触って分かった事は、その炎は闇属性の炎という事だ。」
「闇属性の炎?バルロス様、それはどういう事ですか?闇属性に炎など存在しないはず。」
「ガディス。確かに本来ならあり得ない炎だが。要の世界には、この炎が存在しているのか?」
「ん〜、存在していると言うか、してないと言うか、現実には存在しない炎なんだよな。本とかには載ってたけど。」
「うむ、そうなるとその知識により、その炎を出す事ができたという事か。だが、その炎でラザリオを攻撃したとして、どれほどのダメージを与える事が出来るかなのだが。」
「そうですね。要がどんなイメージでその炎を作り出し操るかにもよりますわね。」
そう言われ要は掌をみた。
すると急に洞窟内が揺れだした。そう既にクルテルは詠唱を唱えラザリオに攻撃を仕掛けていた。
「クルテルが攻撃を仕掛けたみたいですね。」
「ユリナシア、そのようだな。だが、このままではクルテルだけでなく洞窟が崩壊し、我々も生き埋めになってしまう。何とかしなくてはな。」
「バルロス、やってみようと思う。この漆黒の炎がラザリオに効くか分からない。だけど、このままだとクルテルも俺達も洞窟が崩壊し怪我だけじゃ済まなくなる。」
「要、無理だけはするな。だが、今はその方法しかない。」
そう言うと
「クルテルは、かなり辛そうだな。」
ガディスがそう言った瞬間、クルテルが放った魔法が暴走した。そして、龍形の岩石が洞窟の至る所に当たり崩れ出した。
「これって、クルテルの魔法が暴走したのか?」
「そうらしい。我々を守っていたゴーレムも今ので消えた。恐らくクルテルが魔法を制御する事が出来なくなり、ゴーレムの魔法が解除されたのかもしれん。」
「バルロス。じゃ、どうするんだ?」
「そうだな。今直ぐクルテルを助ける。これ以上魔法を使わせるのはまずい。要、クルテルは龍がいなければ魔法は使えない。我はガディスとユリナシアを連れこの場を離れようと思う。その間、クルテルを救いこの場から脱出して欲しい。」
そう言われ要は掌をみた後、クルテルの方をみた。
「やれるか分からないけど。とりあえずやってみる。」
「要、済まない。俺がもう少し強ければ……。」
ガディスは悔しさの余り下を向きながら一点を見つめると、拳を力いっぱい握り締め地面を殴った。
「要、それでクルテルを助ける方法なのだが。……。」
「勝負は、その一瞬で決まる。今のお前がその一瞬を逃せば……頼んだぞ!要。」
そして、要は頷きクルテルの方を見ると、やるしかないと決心した。
(とりあえず。思いつく限りの炎のイメージで攻撃していくしかないよな。)
要はそう考えながら、ラザリオを警戒しつつクルテルの側に近付いていった。その間、ユリナシア達は洞窟の外へと向かった。
そして洞窟はクルテルが放った魔法が更に暴れ地響きを起こし岩壁を壊していた。
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