要の能力の正体
ユリナシアはガディスの治療をしながらクルテルの戦況を伺っていた。
だが、クルテルがアクアリュウムの原石を手にしている事に気づき驚いた。
「な、何故クルテルがアクアリュウムの原石を手にしているのでしょうか?そう言えば戦いの最中、洞窟の岩壁が崩れていましたが。……偶然とはいえ何という事なのでしょう。」
「ユリナシア様、どうされたのですか?まさかとは思いますが、あのアクアリュウムの原石は加工品より魔力や能力が上がるだけではないのですか?」
「ガディス。ええ、魔力や能力が上がるだけではなく、威力が増します。ですが、それだけではありません。元々クルテルは魔力を今まで体内に蓄えていました。それも杖がなくなり制御が困難だったはず。ですが、アクアリュウムの原石を手にした時点で更に制御困難になったはずです。」
「まさかそれって、下手すると力が暴走するかも知れないって事なのか?」
「要、そうなりますね。クルテルも危機的状況に陥る可能性は非常に高いです。それと、ここはアクアリュウムの原石の宝庫ですので、それだけでは済まないかと。」
「じゃ、この洞窟が崩壊するって事なのかな?」
「涼香の言う通り。クルテルの暴走した魔力により、洞窟内のアクアリュウムの原石がその魔力に反応し合い増幅し間違いなく崩壊するでしょう。」
「でも、何故だ?クルテルは何を考えてアクアリュウムの原石を手にしていると言うのだ。」
「ガディス、それなのですが。これは私の推測ですが、アクアリュウムの原石を手にしている事をラザリオに知られてしまい、その原石をラザリオの手に渡らないようにする為、このような手段に出たのではと思ったのですが。」
そう言いながらユリナシアはクルテルの方を向き心配そうに見ていた。
ガディスはクルテルを助けたいと思う気持ちだけで、身体が動かず悔しい気持ちになり不甲斐ない自分に腹を立てていた。
要はどうしたらこの状況を回避できるのかを考えていたがどうしていいか分からなくなり困惑していた。
涼香は心配そうにクルテルを見ていたが、どうにかこの危機的状況を回避出来ないかとバルロスに相談する事にした。
(ねぇ、バルロス。何とかならないのかな?)
“ふむ、回避するとなるとかなり難題だな。このまま見捨てるのが手取り早いのだが。流石にそれもできん。それに、我も……いや、ドラゴノヴァ国にとって、クルテルと言う戦力を失う訳にはいかぬ。”
(何か方法があればいいんだけど。)
“方法は皆無だ。だが、少し要の先程の攻撃を見ていて気になった事がある。”
(気になった事?)
“ああ、涼香すまぬが要に直に確認を取りたいのだが。入れ替わってくれぬか。”
涼香はそう言われ心の中で頷きバルロスと入れ替わり表情が一変した。
そして、
「要すまぬが、お前と話がしたく涼香と入れ替わった。」
「ん?バルロス、なるほどそうか。それで俺に話ってなんだ?」
「お前の能力についてなのだが。」
「俺の能力?」
「ああ、本当に炎の能力なのか?」
「多分そうだと思うけど。」
「バルロス様。まさかとは思いますが、今使っている要の能力は本来の使い方とは違うと思っているのでは?」
「流石はガディス、その通りだ。だが、断言はできん。要、お前はその能力を使う時どうやって炎を出している?」
「確か……初めてこの能力を使った時は、どうしても縄を解きたくてナイフや炎をイメージしていたような気がする。その後も炎をイメージしてその大きさとか動きとかもイメージして攻撃していたような気がするんだけど。」
「うむ、なるほどな。まさかとは思うが、これは試さないと分からない事なんだが。それにこれを直ぐにできるか分からぬが。要、試しに炎以外の属性のものをイメージしてくれぬか。」
「炎以外の属性のイメージ……出来るか分からないけどやってみる。」
そう言うと要は右手を前に翳し水の剣をイメージしてみた。
だが、目の前に現れたのは炎の剣だった。
「これって、どう見ても炎の剣だよな?」
「うむ、違ったか。やはり炎……だが、イメージして炎を出しているとなるとな。我が知っている能力と類似している。」
「バルロス様。いったい要のこの能力は何なのですか?」
「イメージして炎を作り出す能力なのだろうがな。」
「そっか、結局は良く分からないって事だよな。」
「だが要、恐らくこの能力は使い方次第では強力な物を作り出す事が可能だ。まぁお前がどんな炎のイメージを作り出す事が出来るかにもよるだろうがな。」
そう言われ要は自分の掌をしばらく見つめ考えていた。
(バルロスが言いたいのは、この能力を俺がどう使うかによって戦況が変わるって事だよな。)
「バルロス様、もしかしたらこの状況を打開出来るかもしれないのですか?」
「ユリナシア、先程も言ったがこれは、要がこの状況で、その能力をどう使うかできまる。それに、今のを見るとまだ上手くイメージが出来ていないらしい。」
「という事は、俺が炎に関しての知識力と威力のイメージをどれだけ出来るかにもよるって事だよな。それってかなりハードルが高いんだけど。」
この状況でどんなイメージの炎を作り出し攻撃を仕掛けたらいいのかと、要は悩み頭が混乱していた。
要達がそう話をしている頃、既にクルテルは手を上に翳し詠唱を始めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます