ドラゴノヴァ国内4強の1人

 ラザリオはクルテルを不思議そうに見ていた。


「……おい!龍が居ないと言うのに、ドラゴナードのお前、何で魔法を使っている!」


 そう言うとラザリオは睨み付けながら、クルテルの側に歩み寄って来ていた。


 クルテルは杖を握り直し、近づいてくるラザリオに向け翳し、呪文を唱えようとしていた。


 既に要は攻撃体勢に入っていた。


(このままじゃ、クルテルまでもあの男にやられる。俺に何処までやれるか分からないけど……ふぅ、涼香の事を守らないとな。)


 要は、両手に炎を纏わせると、両手を上にあげ炎同士を合わせ、更に頭でイメージし巨大な炎を作り出しラザリオ目掛け放った。


 それと同時にクルテルも杖をラザリオの足元に向け、


 《トランブルマンドテール!!》


 呪文を唱えると、足元が徐々にグラグラと揺れだし、ラザリオは体勢を崩した。


 体勢を整えようとしていたが、更に揺れ出しラザリオの足元だけ地盤が崩れた。


 そして追い討ちを掛けるように、要の放った巨大な炎がラザリオの頭上まで迫っていた。


 ラザリオは咄嗟に斧を振り上げ打ち消そうとした。だが、地面が隆起し突き出た岩がラザリオの腹部を直撃し更に体勢を崩し炎が肩に直撃した。


 しかし、揺れは次第に収まってきていた。


「……何なんだ!?ドラゴナードといい。異世界のガキといい。フッ、まぁいいこの程度なら余裕で倒せそうだ。」


「クソッオォォ!コイツ強すぎる。こんな奴どう倒せっていうんだよ……。」


 クルテルはラザリオを警戒しながら要と涼香の方に近づいていった。


 そして側まで来るとクルテルは要に小声で話し掛けた。


「要。恐らく炎自体無意味かもしれない。さっき試しに火とは無縁の魔法を使ってみたけど。少しだけど効いてたみたいだ。」


「じゃ、俺の能力じゃアイツを倒せないって事なのか?」


「うん、そうなるね。」


「……何をコソコソと話している?まぁどんな手を使って来ようが。俺には通用しないと思うがな。だが、何故だ?何でお前は魔法が使える?」


「さぁ、貴方にその訳を、私がはい教えますと話すと思いますか?」


「フッ、いや思わん。だが、本当にお前ドラゴナードなのか?それとも突然変異か?」


「突然変異って……いえ、私は間違いなく純粋なドラゴナードですが、なにか?ご不満でしょうか。」


「なるほど。そうなると、この何処かに龍が隠れているとしか考えられぬ。だが、この狭い洞窟の中の何処に龍がいる?」


 そう言うとラザリオは辺りを見渡してみた。


「クククッ……。さぁ、龍は何処にいるのでしょうねぇ。」


「ふん、まぁいい。力づくで吐かせるまでだ!」


 ラザリオは斧を構えクルテルを攻撃しようとしていた。


 クルテルは杖を地面に突き立てた。


「……何のつもりだ?杖を地面に突き立てて、何をしようとしているか分らんが。先程の攻撃を見る限り、お前の魔法は地の魔法とみた。だとすればマグマ系以外の魔法は大した事なさそうだな。」


「さぁ、どうでしょう。私の名はクルテル=ラグザこれでもドラゴナードの中でも名が通っていると思っているのですが。流石に顔を知られていないと警戒して頂けないようですね。」


「クルテル=ラグザ……まさかお前があの地獄落としのクルテル!確か炎と地の魔法を自在に操ると聞いていたが。なるほど、面白い!一度戦って見たいと思っていた所だ!」


「それはそれは光栄でございます。クククッ。私もまさかこんな所で四天王の頭とやり合うなどと思ってもいませんでした。お陰で震えが止まらず今にも泣きたいほどです。」


 そう言うとクルテルの表情が一変した。いつもは目が開いてるのか閉じてるのか分からないほどの糸目。だが、今のクルテルは目を見開きラザリオを鋭い眼光で睨み付けていた。


「なるほど。それがお前の本来の戦闘スタイルという事か。なら、はじめようじゃないか!」



 一方、ユリナシアはクルテルと要がラザリオと戦っている間にガディスの所に来ていた。


 ガディスは剣を地面に突き刺したまま立とうとしていた。


「ガディス、動かないでください。私が治療しますので。」


 ユリナシアは持っていた回復薬をガディスに飲ませ傷の手当てを始めた。


「ユリナシア様。はぁはぁ。申し訳ない。だが、このままでは、あのクルテルもラザリオにやられてしまう。」


「ガディス。私の方こそ何と言ったらいいか。こんなになるまで戦ってくれてありがとうございます。」


「いいえ、勿体なきお言葉……。」


「それにクルテルの心配までしてくれるなんて……ですが、クルテルはそう簡単には倒れないと思いますよ。見た目はあれでも、ドラゴノヴァ国内で4強の1人と言われた男ですから、ある程度までならこの場を凌げると思いますので大丈夫でしょう。」


 ユリナシアがそう言うとガディスは目を見開き驚いた。


「い、今何と言われましたか?あのクルテルが……いや、何故今まで気が付かなかった!ドラゴナードのクルテルと言えば、だが、噂では血も涙もないほどに凶暴と聞いていたが。」


「クスクス。何処からそんな噂が流れたのかしら?ですが、そうですね。……今のクルテルは目を開けていますので、下手をすればそこまではいかないにしても近い状態であるのは確かかもしれませんわね。」


「それはどういう事なのですか?」


「クルテルがいつも薄目を開けている状態でいる訳は、魔力の温存と普通のドラゴナードよりも魔力があるので、その魔力を抑える為なのです。」


「では、そんな噂が流れた訳はその魔力のせいだと言うのか?」


「いえ、それだけではありません。ラザリオとの戦いを見れば分かると思います。」


 そしてユリナシアはクルテルの戦況を見ながら、ガディスの治療をしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る