ブレグランの化け物

 ガディスはラザリオを鋭い眼光で睨み付けていた。


 ラザリオはガディスに背部を斬りつけられ、地面に膝をついていたが、余裕の笑みを浮かべ立ち上がった。


「ふっ、なるほど。流石はルトルシニアの四天王、戦いはこうでなくてはつまらん。だが、あの圧縮魔法をどうやって解除した?」


「戦闘好きな強靭な肉体を持つとんでもない男と噂に聞いていたが。ここまでとは思わなかった。それと、どうやって解除したか。そんな事どうでもいい。」



 そうガディスはルナソルからヒントをもらい、この圧縮魔法は剣と力技で破壊できるのではないかと思った。そして剣を握り最大限に力を込め数回斬りつけ破壊した。


 ルナソルはそれを見て慌てて魔法を放とうとするが、ガディスの踏み込みが一歩速く、氷を纏った剣はルナソルの腹部を斬りつけた。


 その後、ガディスは涼香達を助けるべく、ラザリオの背部を斬りつけたのだった。



 そして、ガディスはラザリオとの間合いを取っていた。


(下手に間合いに入れば、ラザリオの攻撃を真面に受けかねない。だとすると、どう動く?流石に先程無理をしたせいか限界が近い。だが、ここは何としても俺の力で切り抜けなければならぬ。)


 ガディスは剣を握り直しラザリオに剣先を向け構えた。


(さあ、どうする?ガディス。冷静を保っているように見えるが、かなり息が荒いな。そろそろ限界という事か?まぁそれならそれで好都合。)


 ラザリオは斧を持ち直し構えた。


 要とクルテルとユリナシアはラザリオに攻撃をしようとしていた。だが、ガディスがラザリオの注意を自分の方に向けた事で、3人はいつでもガディスの援護ができる体勢へと切り替えた。


「ガディス!大丈夫なのか?」


「要!いいなお前は手を出すな。涼香もだ!」


「ガディス。いいのか?お前1人で俺を倒せるようには見えないが。」


「ラザリオ。俺をどう見てるか知らないが、お前を倒すのに俺1人で充分だ。誰の手も借りるつもりはない。」


「ふっ、まぁいい。俺をやれるものなら、やってみろ!」


 ラザリオがそう言うと、ガディスは深く息を吸って吐き全身に冷気を纏うと、


(やはり、それほど魔力が残っていない。ここは一気に攻めなければ。ここで長期戦になれば俺は間違いなく負ける。)


 剣に魔力を込めた。そして、ラザリオとの間合いを取りながら、左から右に剣を一閃すると、氷の斬魔を放った。


 ラザリオはすかさず氷の斬魔を斧で薙ぎ払った。


 ガディスは瞬時にラザリオの懐に入り、ガラ空きになった胸目掛け、氷を纏った剣で斬りつけた。


 するとラザリオは、足に炎を纏いガディスの腹部を蹴り上げると宙を舞った。


 ラザリオはすかさず宙に浮いているガディス目掛け斧を振り下ろした。


 ガディスは咄嗟に全身に冷気を纏いガードしようとした。だが、その攻撃を真面にくらい地面に叩き付けられた。


「ぐはっ!……はぁはぁ。クッ、ま、まだだ。」


 ガディスは攻撃を受け地面に叩き付けられ動くのがやっとだった。だが、剣を地面に突き立てながら立ち上がろうとしていた。


「ガディス。流石のお前も、もう限界のようだな。それと、後々の事を考えると、生かしておくと面倒な事になりそうだ。そうなると、ここでお前を始末しておいた方が良さそうだな。」


 そう言うとガディス目掛け斧を振り下ろそうとしていた。


 すると巨大な炎の球が、ラザリオ目掛け降ってきた。それに気付き斧を振り搔き消すが、残り火がラザリオの身体に降り注いだ。


「あ、熱い!?な、なんだこの炎は?魔法の炎ではないな。これをいったい誰が?」


 ラザリオはクルテル、ユリナシア、涼香、要の順にみた。


「なるほど。お前がこれをな。やはり、お前と後ろの女はこの世界の者ではないようだな。」


 そう言うとラザリオは鋭い眼光で要を見た後、側に近付いていった。


 要は両手に力を込め炎を纏い、次の攻撃の準備をしていた。


(クッ、ま、不味い気付かれた。だが、クソッ、身体が思った通りに動かない。このままじゃ要と涼香が殺される。運が良くてもブレグランの手に落ちるだろう。それだけは、何とか阻止しなければならない。)


 ガディスは何とか動こうとしていた。しかし、ガディスの身体は既に力を使い果たしボロボロだった。


 クルテルとユリナシアはその様子を見て、


「クルテル。ラザリオに攻撃を仕掛け、要と涼香を守って下さい。このままでは、2人ともブレグランの手に落ちてしまいます。間に合うか分かりませんが、私はラザリオの目を盗みガディスの回復をしたいと思います。」


「分かりました。ユリナシア様お気をつけて。」


 そう言うとクルテルは杖を握り直した。そしてラザリオに杖を向け翳し小声で、


 《エリュプシオン!!》


 呪文を唱えると、ラザリオの真下がグラグラと揺れだしたと同時にマグマが吹き出した。


 ラザリオは揺れだし体勢を崩し、一瞬何が起きたか分からなかった。そして、自分の真下からマグマが吹き出すとは思っていなかった為、マグマを真面に全身に浴びた。だが、ラザリオはその程度では擦り傷程度にしかならなかった。


「あらら、流石は、私達ドラゴナードから、ブレグランの化け物と呼ばれているだけはありますね。その魔法が効かないとなると……。」


 そしてその間、ユリナシアはガディスの元に向かった。


「……これは、魔法。いったい誰が放ったと言うのだ?確かここにはドラゴナードが2人いる。だが、龍は封印されていて、魔法は使えないはず。そうなるとこれはどういう事なのだ?」


 そう言うとラザリオはクルテルを不思議そうに見ていた。

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