ガディスVSラザリオとルナソル

 ここはエルラスタの鉱山の中。ガディスはトロッコに乗り、ラザリオとルナソルがいる方に向かっていた。


 そして、ガディスはトロッコの中で片膝を付き目を閉じ左手で腰の鞘を抑えた。すかさず、右手を柄に添え剣に魔力を込めると、いつでも攻撃出来るように構えた。


(……いったい何者なんだ?痛っ!それにしても、こうも唇が痛くては話す事ができん!仕方ない、喋らずに方を付けるか。)


 一方ラザリオとルナソルは、ガディスが乗ったトロッコが近づいてくるのを待ち構えていた。


「ラザリオ。私いい事思いついちゃったんだけど。」


「ん?ルナソル何を思い付いたんだ。」


「あのね。……。」


 ルナソルは思いついた事を話した。


「……なるほど、そうなると。ガディスがこっちにくる前に、急ぎ俺かルナソルどちらかが向い側の岩陰に移動しないとならないが。そうだな、時間もないし俺が行く!」


 そう言うとラザリオはそのまま向いの岩陰に移動した。


「あっ!って……ラザリオ。あー行っちゃった。」


(まぁいつもの事だけどね。)


 そして、ガディスはラザリオとルナソルが待ち構えるその場所まで来ると、


(はっ!まさか、この殺気は?何故ブレグランの四天王の2人がここに!?)


 ガディスは両脇から放たれている殺気に気付き、目を開け咄嗟に足に氷を纏いトロッコの後部に重心をかけ揺さぶり弾みをつけ、思いっきり滑るようにトロッコの前の部分を蹴り上げるとトロッコは前上に回転し宙を舞った。


 それと同時にルナソルが左側から光の魔法を放ち宙を舞っているトロッコにあたり弾き飛ばした。


 ガディスはトロッコが宙に浮いたと同時に、反動を使い宙を舞うように後ろに回転し回避した。


 だが、ラザリオはガディスを見逃さなかった。瞬時にそれに気付き斧を構えながらガディスの懐に入ろうとしていた。


 ガディスはそれに気づいたが剣を抜く暇がなく、咄嗟に地面に両手を翳し、


 《冷気 氷結掌!!》


 すると掌から凍てつく程の冷気が放たれ半径約30mの地面と岩壁の一部と線路が一瞬の内に凍り付いた。


 ラザリオはそれに気付いたが時既に遅く、自分にブレーキをかけるが滑り体勢を崩した。


 ガディスはすかさず剣に氷を纏わせ構えると、ラザリオの懐に入り斬りかかろうとした。


 しかし、既にそれを予測していたルナソルは杖をガディスに向け翳し光の鎖を放っていた。


「……!?」


 気付いた時には時遅く、光の鎖はガディスに巻き付き体勢を崩し片膝を付いた。


「ふっ、ガディス思っていた程では無かったようだな。これがルトルシニアの四天王の力とは後の3人も大したことはなさそうだ。」


 ラザリオはそう言いながら、側まで来るとガディスを見下ろした。


 ラザリオの後からルナソルが近づいて来ていた。


 そして、涼香達はその光景を見ていて、


「ガ、ガディス!?そんなまさか……。」


 ガディスが捕まり、要は一瞬戸惑ったが、ラザリオ達が襲ってくるかもしれないと思い涼香の前に立ち身構えた。


 クルテルはユリナシアの前に立ち既に杖を構え攻撃をしようとしていた。


 だが、ユリナシアはガディスが余りにも簡単に捕まった事が腑に落ちなかった。そして気になりガディスを見ていた。


 ユリナシアから見たガディスは、下を向き膝を付いたまま、左手を地面につけ右手には剣を握ったまま光の鎖で全身拘束されていた。


 しかし、ガディスのその後ろ姿を見たユリナシアは、敗北した者の姿には見えなかった。


 ユリナシアはガディスは何か考えがあり、わざと捕まったのではと思い、


「……クルテル。攻撃するのは待って。もしかしたら、ガディスは何か考えがあって捕まったのかもしれません。」


 ユリナシアがそう言うとクルテルは不思議に思ったが頷き、攻撃するのをやめ翳していた杖を握り直し構え、いつ襲ってきても大丈夫なように身構えた。


 涼香はどうしていいか分からず要の後ろでその光景を見ていた。


 そして、ルナソルがガディスの側に来ると、


「確かに、こんなあっさりと捕まるなんてね。でも、変ね?この程度の奴にネフロスとラゴスがやられるなんて……。」


「ルナソルの言う通り。本当にこのガディスがあの2人をやったと言うのか?だが、その事も踏まえあっちが片付いたら口を割ってもらわないとな。」


「……。」


(ふっ、なるほどな。ネフロスとラゴスの件で、俺を狙ってここまできたって事か。って事は、まだ涼香達の事は気付かれていない。それなら、要が動く前にラザリオとルナソルを何とかしないとな。)


 ガディスは下を向いたまま不敵な笑みを浮かべていたが、それに気付く者はいなかった。

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