ユリナシアの企み〜最終試練〜

 ここはエルラスタの鉱山の中。ガディスは後をつけている者達に警戒しながらユリナシアに手錠をかけられたまま引かれトロッコの線路の上を歩いていた。


(それにしても、後ろの連中は何らかの意図があり後をつけているのだろうが、どうする?この手錠を、どうにかしなければ、この状態で俺は対応できるのか?……ん?待てよ。そうかその手があった!手錠を軽く凍らせ壊せばいいだけの事。ん〜だがもし、この手錠を壊し外したら負けなのではないのか?)


 そう思いながらガディスは歩いていた。そして、トロッコの前まで来るとユリナシアは立ち止まり、涼香達も歩みを止めた。


 そして、ユリナシアはガディスを見ながら、


(やはり、ガディスの様子がおかしいですね。表情には出してはいませんが、明らかに後方を気にしているように思えます。まさかとは思いますが、私達の後をつけている者がいるのかもしれませんね。でも、誰が?まぁ誰だとしても……ふふ。面白いじゃない!私の領地に侵入しつけ狙うなんてね。さてガディスもそろそろ解放した方が良さそうですね。ただ、普通には解放するつもりはありませんが……。)


 ユリナシアは微かに笑みを含ませた。そして、鉱山の説明を始めた。


「……この岩壁に青く光っているのが、アクアリュウムの鉱石の元となる原石です。そして、この鉱山の奥には更にこことは比べ物にならないくらいの原石が埋まっています。そして、この奥に行くにはここにあるトロッコで移動となりますが。残念な事にこのトロッコには、1人か2人しか乗れません。」


「それじゃ、この先に進めないって事なのかな?」


「涼香。いいえ、この奥へは進みます。説明しますね。誰か1人、先にこの奥へ行きトロッコをこちら側に移動するを繰り返し、何班かに分かれて行います。それで、誰がいいかと考えたのですが、先にガディスに行ってもらいます。」


「……?」


(どういう事だ?何故、俺1人がこの奥に行く必要がある?ユリナシア。……いったい何を企んでいる!それでなくても後ろから誰かがつけて来ていると言うのに。だが、ここは……クッ、まだ唇が腫れ痛い!仕方ない、堪えるか。それにもう、なるようにしかならんだろうしな。)


 ガディスはそう思いながら頷いた。


 そして、ユリナシアはそれを確認すると、ガディスの手錠を外しトロッコに乗るように言った。


 ガディスは頷きトロッコに乗ると、それを確認したユリナシアはトロッコに手を翳し奥ではなく入口の方へ軽く押した。


「……な!?」


(ユリナシア!?これは何のつもりだ?これじゃ後ろの連中と……ん?待てよ。まさか、後をつけられている事に気付き、こんな事をしたと言うのか!)


(さて、ガディス。貴方の力の見せ所ですわよ。ふふ、どう戦うか楽しみですわ。)


 するとトロッコは入口の方へと進み、涼香達の後をつけて来ていたラザリオとルナソルの方へと向かっていった。


 ラザリオとルナソルはガディスが乗ったトロッコが何故こっちに向かっているのか不思議に思いながら、


「ラザリオ!?これって……。」


「ああ。不味いかもしれんな。」


 そして、ガディスの乗ったトロッコは、ラザリオとルナソルの方に向かって来ていた。2人はいつでも攻撃出来るように身構え警戒しながら待ち構えた。

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