第5話レティシア・バレット公爵令嬢 誕生日パーティー

  会場に入ると両親が壇上に上がる。

「本日は、我が娘レティシアの誕生日パーティーにご出席頂きありがとうございました・・・・・・。」

ハワードの挨拶の後、レティシアが壇上に呼ばれる。


「皆様、レティシア・バレットでございます。

本日はお忙しい中、私の5歳の誕生日パーティーにご参加いただきありがとうございます。

最後まで、お楽しみいただければ幸いです。」

 清楚で可憐な令嬢が、凛とした声で微笑みながら堂々と挨拶を言う姿に、拍手と賛辞が送られる。


「では皆様、パーティーを最後までお楽しみ下さい。」

ハワードの締めの言葉と共に、両親とレティシアは壇上から下がり出席者への挨拶へと向かった。


 最初に銀髪と紫の目をした美しい王太子エドモンド・リーバ殿下に挨拶をする。

そして、王弟アーサー・リーバ様、王妃の弟で魔法研究所所長ルーサー・ページ伯爵、ロレーヌ公爵家一家、ドレーブ公爵家一家、バレット家派閥の貴族達に順番に挨拶をしていく。


 挨拶が終わり、王弟が苦手なエドモンド王太子殿下と側近候補ロレーヌ家公爵子息ジャン・ロレーヌは先に帰って行ったので、他の子供たちを庭のミニパーティー会場に案内するレティシア。


 一人ずつ簡単に紹介した後、ミーナ・ロレーヌ公爵令嬢、カトリーナ・ドレーブ公爵令嬢と会話を始める。勿論この場では互いに婚約候補者になっている事は話さない。


 レティシアとしては2人に近づきたいと思うが、お互い公爵家の子供、お互いを褒め合う等、貴族の会話が続き、何とか趣味を聞きだせた所で、同じ派閥の子供達も会話に参加。

 和やかな雰囲気のまま無事にパーティーは終了した。


 他の出席者が帰っていく中、王弟、ルーサー、ロレーヌ公爵はバレット公爵と暫く話しをしているという事で、ミーナはレティシアと一緒に遊んで待っていることになった。


 ミーナに近づくチャンスに張り切って、ミーナ情報を収集していく。

「ミーナ様はもう家庭教師に教わっていらっしゃるんですか?

ご家族が騎士団長様ですから、魔法か剣等の練習もはじめていらっしゃるのかしら。」

「いえ、私は家庭教師は6歳からと決まっているんです。魔法や剣も習いたいのですが、魔法は良いのですが、剣に関してはお父様とお兄様は危ないからと反対で。」


 悲しそうなミーナを見て、ミーナが騎士になりたかったが諦めたと言っている映像を思い出す。


 「婚約者候補の事は好きではない。妻さえ好きに選べない。」と言う王太子にマリーが「立場なんて気にせず、やりたいようにやらなきゃだめよ。」って言うのよね。

王太子がやりたくない事は、やらないっていうのはね・・・・・・。


 それを聞いていたミーナは、それまでマリーが自由奔放でも王太子や高位貴族を侍らせても気にしたなかったのに、王族の務めを果たさない王太子を軽蔑、マリーも嫌うようになるの。

 婚約者候補になったせいで騎士を諦め、国に尽くそうと努力してきたから、

その考え方が王太子の責任放棄と思って許せなかったのかしら。

 


 騎士が夢なら、護身術を進めてみようかしら。

護身術が出来たら騎士の訓練へと繋がるようにして。

その上一緒にやれば、さらに友情が深まって信頼関係へといけるかもしれないし。


「残念ですわね。私は魔法と、私にもできそうな護身術を習うつもりです。

公爵令嬢だけでなく、婚約者候補となると護身術は絶対に必要だと考えていますわ。

 訓練は痛そうですから本当はやりたくありません。ですからどなたかと一緒なら頑張れるかと思ったのですが。

きっとミーナ様のご家族は、ミーナ様が大切すぎて痛い思いをさせたくないのでしょうね。」

残念そうにミーナへ言う。


 それを聞いてミーナは思う。


護身術って言えば良いのね。

基礎体力をつけておけば騎士になるときに役に立つわ。

レティシア様がやるって言う時一緒にいれば、私も説得できるかもしれない。


 映像通り騎士になりたいミーナ、レティシアに頼むことにする。

「レティシア様、もしよろしければ護身術の事、ご一緒にご両親と私の父に頼みに行きませんか。もしかしたらご一緒に訓練もできるかもしれません。」


 狙い通りの流れに心の中でニンマリ笑う。

「勿論ですわ。そうだわ、今から頼みに行きましょう。

私の誕生日ですもの。ご一緒にお願いしてみましょう。」

 可愛らしい笑顔のレティシアに感謝しながら、ミーナは嬉しそうにうなずいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る