第6話バレット公爵家メイド シーナ 家族を誘拐される

 大人たちのいる場所へ向かおうとメイドを探していると、シーナがいるのを見つける。 声をかけようと近寄ると、シーナが泣いていて紙を握りしめている。

 

「どうしたの、シーナ。」

 シーナの持っていた紙を取り上げると”お前の家族を預かっている。連絡を待て”と書いてある。

「これは・・・・・・。泣いている場合ではないわ。シーナしっかりなさい。

ミーナ様、申し訳ございません。先程のお話はまたの機会にさせて頂きます。」


 そう言うと、執事のアルフレッドを呼ぶ。

「お父様たちに、緊急の要件があります。案内しなさい。お母様にもお知らせして頂戴。

ミーナ様、ご一緒に参りましょう。シーナ、あなたもよ。」


 緊急と聞いた執事は、信頼のおける使用人に指示を出し、書斎へ案内する。

「失礼いたします。レティシアお嬢様でごさいます。」

 ミーナとシーナを廊下に待たし書斎に入ると、ハワード、王弟、ルーサー、ロレーヌ公爵がワインを並べて寛いでいた。

「どうしたんだい、レティシア。」

「皆様、本日はありがとうございました。

お話し中申し訳ございません。お父様大事なお話がございますの。(何そのワイン)」

「そうか、申し訳ないが少し外させてもらうよ。(なんだか笑顔が怖いな)」


 書斎を出てくるハワード。皆で隣の部屋へ入ると、メリーナもきていた。

「先程、シーナがこちらの紙をみて泣いていたのです。」

 

 バレット夫妻は渡された紙を読むと、ハワードは優しくミーナに問いかける。

「この紙は、ミーナ様もご覧になったのかな。」

「はい。」

「では、彼らにも話すから書斎へ戻ろう。アルフレッドは警備の状況を確認してくれ。」

「かしこまりました。」


 ミーナが知っている為、今の状況を3人に説明した後、他言無用とお願いした。

シーナに詳しい話を聞く為、皆に失礼を詫びつつ帰宅を促すハワード。

しかし、王弟達は目を見合わせた後、3人を代表し王弟が協力を申し出る。

「秘密裏に動くことを約束する。私達に何か協力できることがあるかもしれない。」


 王弟に言われてしまい、立場的に反対できないハワードは頷いて了承する。

「シーナ。いつも言っているように、我がバレット家では使用人も使用人の家族も大切なバレット家の一員だ。私が最善を尽くすと約束しよう。

 紙を受けとった状況と、ご家族に関してお前が今分かっている事を話してくれ。」


「はい、旦那様。パーティーが終わり、片づけをしていた時です。

家の使いの者が来ていると、門番のアセットに言われ会いに行くと、見知らぬ男性がいました。父から手紙を預かったと封筒を渡され、戻りながら読んだら・・・・・・。」

「申し訳ありません。若い男で紺色の髪と目、身なりは街の男性と同じような服でした。家族の無事はまだ確認できていません。」


「よく話してくれたね、シーナ。あちらで絵師と似顔絵作成を行ってくれるかい。

アルフレッド、シーナの家に男女の護衛を普通の服で確認に行かせろ。」

執事とメイドが退出する。


「ロレーヌ公爵はミーナ様と直ぐにお帰り下さい。

使用人の家族を誘拐し当家を害する気なのか、ただの誘拐なのか、他の貴族も狙っているのか、あらゆる可能性を考慮しないと。」


 ハワードの言葉にうなずいたロレーヌ公爵は、ミーナの側に行く。

「婚約者候補が分かった後なのが気になりますな、そちらは当家の信頼のおける者を使って調べさせます。我々はこれで、ミーナ、皆様にご挨拶を。」

挨拶をしたミーナを連れて、見送りを固辞し退出するロレーヌ公爵。


「街や貴族の方は私が調べるよ、最近何かあったのかどうか。分かり次第連絡する。」

 王弟も、見送りは固辞し挨拶をして帰って行った。


「僕は研究所で待機しています。必要な魔道具や魔法の痕跡解明とか、いつでもご協力します。直通連絡用の魔道具を1つお貸しします。必要になったらすぐに連絡してください。」

 ルーサーの出した貸し出し契約書に署名をしたハワードは、お礼を言ってルーサーが帰宅するのを見送った。


家族の安全を考え、妻と子に護衛と一緒に過ごすよう話す。

「2人は護衛と一緒にいてくれ。私は書斎にいるから、何かあれば人を。」

「かしこまりました。」

 邪魔にならないように、メリーナとレティシアは退出した。


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