二章

怪物の狩人

【表現】[]内は補足情報

【表現】()内は口に出さない考え




 動物を越えた生き物〝怪物カイブツ〟は混沌コントンに生まれたと考えられています。※怪物のイメージは地球の古生物[地球にフラシリア大陸は無いよ]

 魔術バシュツの影響を受けた動物が変異して生まれた説が有力です。

 魔導士バトウシのもたらした魔法バホウで消滅した魔物バブツと異なり生き物である怪物カイブツは世界に存在し続けました。


 フラシリア大陸の四分の三を占める怪物カイブツの活動領域サウルウェルスには人が生活していません。

 サウルウェルスは魔術バシュツの影響で激しく地形が変動した地域で大規模な崩落で形成された広くて深い低地や雲を突き抜けて天まで届きそうな山々などが存在しています。

 人の活動領域クインスラントはサウルウェルスと比較したら穏やかな地形で広い平地や高くない山々があります。

 人を動物に含めてクインスラントは動物の活動領域と定義する人々も存在します。


 魔法バホウが無かった混沌コントン魔術バシュツを用いる人々がフラシリア大陸の全域で暮らしていたと言い伝えられています。

 怪物カイブツを圧倒する魔術バシュツを扱った人々は生態系の頂点に君臨していました。が魔法バホウ以降、魔術バシュツを失った人々は怪物カイブツに脅えています。


 混沌コントンの最期、意図せぬ魔術バシュツが世界を壊しかけなければ魔導士バトウシなど召喚されず魔法バホウも訪れなかったのかもしれません。

 そうであったら、などと考えるのは無益な事ですが……。



 イート教会を後ろ盾に人々を苦しめた大国シナノスに対抗する為に建国されたフルクリント王国はシナノスを滅ぼして人の領域クインスラント全域を支配しました。


 敵性国家を失ったフルクリント王国に対国家を想定したフルクリント王国軍の必要性は現状[当時]、存在しないと考えたヒノ・ノワールは王国軍を解散しました。

 フルクリント王国軍はヒノ・ノワールが建国したフルクリント王国に属する諸侯の兵力を集約した軍隊で大国シナノスと対峙する為に結成されました。

 王国軍を構成する人員や武装はフルクリント王国が所有しておらず目的を失った組織を継続させる意義は無くなります。

 存続させた末に余計な権威を有したら振り回される可能性があり強大な武力を持つ軍隊は必要ないとヒノ・ノワールは考えました。


 諸侯が有する武力に対してヒノ・ノワールが用いた制御方法は治安維持を目的とした武力の保有を認める事でした。

 ヒノ・ノワールは兵士たちの仕事を残しながら攻城兵器などの不要な要素を廃棄するように命じます。

 戦争が不要な社会で攻城は起こりがたい状況であり不必要な武力を有する正当性の無い諸侯は反抗できませんでした。


 領地を持つ諸侯たちは治安維持を目的とした武力を有しています。

 領地を持つ人々は領地を守る義務があり許しなく他の領地で治安維持活動を行う事は原則的に禁じられています。



 ヒノ・ノワールは廃棄される攻城兵器の一部を新設した怪物カイブツ機関フォルニアに集約させました。

 諸侯と共同で設立した国家組織〝怪物カイブツ機関フォルニア〟は怪物カイブツの領域サウルウェルスから人の領域クインスラントへ侵入する怪物カイブツに対処する使命があります。

 フォルニアは現在行われている第一の目的『クインスラント防衛』の他に計画段階な第二の目的『クインスラント拡大』が有ります。

 第二の目的を果たす為に考えられているサウルウェルス侵攻計画は怪物カイブツを挑発しないで行える調査には限界があり難航している事から殆ど進んでいません。


 フラシリア大陸で暮らす人々はフラシリア大陸と同規模、それ以上に巨大な大陸が有るのかを知りません。

 海洋技術が進歩しても魔術バシュツなき世界で怪物カイブツが巣くう海の沖合を越える事は未だに実現できていません。

 フラシリア大陸と周辺の島々は人々が観測している世界の全てと言っても間違いではありません。

 存在すら不確かな大陸に存在する可能性がある敵より側にいる犯罪者や怪物カイブツの対処がフルクリント王国では重要視されています。


 怪物カイブツ機関フォルニアは人の領域クインスラントに侵入した怪物カイブツの討伐を行う〝駆除部署〟や怪物カイブツの骸から性質を研究する〝研究部署〟なども有ります。

 駆除部署はクインスラントとサウルウェルスの境界にある〝前線基地〟を拠点に活動しています。

 サウルウェルスから遠く離れたフルクリント王国の王都クリンフィートにも駆除部署の管理する基地は存在しますがフォルニアの本部カメルハイランを間借りしている状況です。

 前線基地から遠く離れたクリンフィート周辺で駆除部署が駆除を目的に活動することは前例が有りません。


 前線基地の後方に建てられた〝中央ちゅうおう怪物カイブツ研究所けんきゅうじょ〟には捕獲された怪物カイブツや死骸が集められています。

 巨大な怪物カイブツの身体を運ぶために前線基地と中央 怪物カイブツ研究所の間には道幅の広い街道が整備されました。

 研究所が併設されている前線基地も存在しますが最先端の技術で大規模な研究を行う目的で建てられた中央 怪物カイブツ研究所は怪物カイブツ研究をまとめる核になっています。

 前線基地や研究所の付近には怪物カイブツ機関フォルニアで働く人々の暮らしを支える小さな町があります。



 怪物カイブツ機関フォルニアが保有する技術や武力は敵性国家が現れても対処できる力を有しています。巨大な怪物カイブツを殺す武器なら城壁や船を壊す力が有るとも考えられます。

 表向きは怪物カイブツに対処する組織ですが状況に応じて軍隊に転用できます。

 『怪物へ用いる』という建前がある限り攻城兵器と等しい武器を所有している怪物カイブツ機関フォルニアは兵器の所有に関して諸侯の様な制限をフルクリント王国から受けていません。※対人を想定した軍隊と対怪物を想定した組織の違いです



 フルクリント王国が建国してから百年ほどが経った今も人の領域クインスラントへ侵入した怪物カイブツの駆除は行われています。※大型の怪物カイブツは一年に数回から十数回あります


 強靭な怪物カイブツを容易に討伐できる武器が開発されるまでは人の領域クインスラントを出る予定が立てられないフルクリント王国は何時の日にかフラシリア大陸を支配するその日を夢見ています。

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