認知する事

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【表現】()内は口に出さない考え




 フラシリア大陸にある人の領域クインスラントを支配するフルクリント王国のフラシル地方にある都市アルセンはコールト家当主のテルモンテ侯爵[中年の男性]が統治している。

 商業や工業で栄える都市アルセンの物流を支えるニシェル川の上流には豊かな自然を育むリア山地がある。

 アルセンで用いられる上質な木材の多くはリア山地の森林から伐採された後、ニシェル川を用いてアルセンまで運ばれている。


 リア山地のティムラ山の麓には林業が盛んなナイシェ村がある。

 ナイシェ村の村長から『ティムラ山に現れた〝怪物カイブツ〟を退治して欲しい[要約]』と懇願されたテルモンテ侯爵はネクローネ部隊長ソリエス[壮年の男性]を呼び出した。


 本来、怪物カイブツの駆除は《カイブツ》機関きかんフォルニアに任せる案件である。が内陸にあるリア山地は怪物の領域から距離が有り『勘違いだった』と謝罪したくはない。


 フラシリア大陸には人々が暮らす領域クインスラントと動物を越えた身体能力を有する怪物カイブツが暮らす領域サウルウェルスがある。

 混沌期から存在する怪物カイブツ魔法バホウの生態系で頂点に位置している。

 低い頻度でクインスラントに侵入する怪物カイブツを除けば怪物カイブツと人の接点はない。人々が避け続ける限りは……。




 コールト・テルモンテ侯爵と面会したネクローネの部隊長ソリエスはティムラ山に出没する怪物カイブツ調査を命じられた。

 怪物カイブツの領域サウルウェルスから離れたリア山地の目撃情報を疑いながらも怪物カイブツ機関フォルニアが見落とした可能性を捨てないテルモンテ侯爵に応えたいソリエスは数人の部下を連れてナイシェ村へ向かい馬を走らせた。


 速度を重視したソリエスは少数の精鋭を引き連れてナイシェ村に到着した。

 村民から歓迎されたソリエスは紹介された目撃者の話を聞いた。

 目撃者の口から語られた〝猿の様な体格〟〝牙〟〝体毛は薄い〟〝全身緑色な肌〟などはフラシル地方で語り継がれている混沌期の伝説に登場する小鬼ショウキを思わせた。


 小鬼ショウキの様な姿の怪物カイブツは未発見で有り(小鬼ショウキの様な怪物カイブツなど実在するのか?)と目撃者の言葉に疑いを抱いたソリエスは村民の真剣な様子を見て(信じ難い話をで否定するなど不誠実だ)と思い目撃した場所の案内を求めた。

 怪物カイブツに脅える不安げな目撃者へ鞘から抜いた剣を見せたソリエスはテルモンテ侯爵から叙任された自身を誇り『この身に代えても守り抜くから安心せよ』と告げた。


 一人の部下を村に待機させたソリエスは残りの部下を連れて目撃者と共にティムラ山へ足を踏み入れた。

 ティムラ山へ入ると森林の奥で暮らす動物たちを頻繁に見かけたソリエスは目撃者へ森林が異常な理由を尋ねた。

 目撃者からは『怪物カイブツから逃げてきた動物たちだと思います。その動物に畑を荒らされて困っています』などと怪物カイブツの影響を説明された。

 真実味が増して不安を抱き始めた部下たちを鼓舞したソリエスは警戒を強めた。


 『怪物カイブツを見つけました!』と目撃者が指さした先には四体の小さな怪物カイブツ? が何かを囲んでいた。


 囲まれている何かは鋭い爪で裂かれた熊の死体で肉がむき出しになっていた。

 死体から引き千切った肉を掴み鋭い牙が生えた口へ運ぶ緑色の猿は体格を除けば動物の猿とは程遠く不気味さを感じたソリエスたちはそれを怪物カイブツと認識した。

 小さな緑色の身体は草や葉に紛れる事から身体能力次第では勝ち目はないと考えたソリエスは退路の確保を優先して部下に指示を出した。が背後の茂みに怪物カイブツの姿を見つけた。


 囲まれている危惧から周囲を確認したソリエスたちは怪物カイブツと目が合い叫ばれた。


 叫んだ怪物カイブツの声で食事中の怪物カイブツたちにも気付かれたと判断したソリエスは鞘から抜いた剣を振りかぶりながら走り怪物カイブツへ振り下ろした。

 振り下ろされた剣は怪物カイブツの身体を叩き切り心臓を切り裂いた。が傷口から血は流れず生き物の様で生き物ではないと思わせる異常な存在だった。

 倒れて動かなくなった怪物カイブツの骸が湯気の様に消える様子を見たソリエスは常識を逸脱していると考えて自分では判断できないと結論付けた。


 切り倒した周囲に居た怪物カイブツたちは叩き切られた仲間を見て脅えていた。

 脅える怪物カイブツを叩き切る事は容易に思えたソリエスだったが集団で熊を仕留めたと思われる怪物カイブツたちを侮るべきではないと考えた。

 叫び声を聞いて木を飛び移り続々と集まる怪物カイブツを殲滅するには人員が足りないと考えたソリエスは情報をテルモンテ侯爵の下へ持ち帰ることを優先してナイシェ村へ退いた。


 知りえた怪物カイブツの情報を記した書状を使者へ託してテルモンテ侯爵の下へ向かわせたソリエスは村長へ森に入るべきではない理由を説いた。が山に入れず林業を行えない事に不満を抱いた村民から『それは出来ない』と反対されたソリエスは『テルモンテ侯爵に増援を求めた』と説明して強引に話を終わらせた。

 安易にテルモンテ侯爵の権威を利用した事を後悔するソリエスはテルモンテ侯爵の評価が下がらない結末を期待した。


 『緑色の何か』が科学の中に居る生き物へ含まれる怪物カイブツだと思えないソリエスは増援が来るまで村を死守する決意を固めた。

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