一度削除されたが警察によって復元されたSNS上のやり取りより抜粋
<よしこ>
[お疲れ様でした。初日だから疲れたと思いますが、明日からは本格的に忙しくなります。今日はゆっくりお休みになってください。もちろんあなたがマッサージをしたお客様の記録を送信してからです。キチンと説明したはずですが一応念の為]
<伊藤康介>
[今日は私のために患者宅への道案内、その他さまざまなフォローをありがとうございました。日報は後少しで送信できるかと。これからもこの調子で頑張っていきますのでよろしくお願いいたします]
<よしこ>
[あなたの担当していたお客様が入院することになりました。空いた時間を遊ばせるわけにはいかないのでこれから指定するアパートに訪問営業とチラシのポスティングをお願いします。急ですが今から事務所にチラシを取りに来てください]
<伊藤康介>
[お疲れ様です。チラシは全てのポストに投函しましたがまだ少し余っています。訪問営業は危うく警察沙汰になるところでした]
<よしこ>
[あなたが捕まるのは構いませんが、会社の名を汚す真似だけはしないでください。言っている意味はわかりますね]
<伊藤康介>
[はい、大丈夫です]
<よしこ>
[明日の昼頃、事務所に来てください。マッサージ希望のお客様が急遽ご来店されることになりました。ベッドは用意してあるので心配しないで仕事に集中するように]
<伊藤康介>
[了解しました。頑張ります]
<よしこ>
[あなたのマッサージを今日、事務所で見せてもらいました。最低です。一生懸命に症状をお客さんに説明しているつもりのようですが、しつこくてクドくて自己満足です。それに伊藤さんは少し体がクサイです。イヤなニオイがします。もっとエチケットに気を使うように]
<伊藤康介>
[申し訳ございません。以後気をつけます]
<よしこ>
[今、どこにいますか? 私たちの長年の顧客がライバル店に取られてしまいました。伊藤さんの担当していたお客様です。一人離れるだけで年間八十万円の損害になります。この損害を埋めるにはどうすればいいのか五分以内にあなたの考えを送りなさい]
<伊藤康介>
[私の力不足で申し訳ございません。ええと、もっと宣伝に力を入れたりライバル店の動向に目を光らせておく必要があるのでは、と愚考する次第です]
<土岡二郎>
[伊藤さんはこの仕事をナメていませんか? 私の妻が少しでも損害をカバーしようと必死になっているのに真剣に答えていません。もういいです]
<伊藤康介>
[これは土岡社長。誤解です。やはりSNS上では上手く伝わりません。明日、直接ご説明いたします]
<よしこ>
[優良顧客が大急ぎでジュニア下着のモデルを募集しています。確かあなたには中学生のお子さんがいると聞きました。なんとか説得して協力をしていただけないでしょうか]
<伊藤康介>
[本人を説得しましたがケンカになってしまい無理でした。すみません]
<よしこ>
[イヤな思いをさせてすみません。忘れてください]
<伊藤康介>
[大丈夫です。娘は今となっては笑っています]
<土岡二郎>
[こちらは笑い事ではありません! おかげで大きな仕事とお客様を逃しました。あなたが入社してからというもの業績はグングン下がっています。本部からも呼び出しを受けています。このままだとこの渋谷店は撤退することになるでしょう。その辺りをよく考えれば笑ってなどいられません]
<伊藤康介>
[私が浅はかでした。深く反省いたします]
<よしこ>
[明日は暇ですか? せっかくの休日に悪いけど引っ越しの手伝いの依頼が急遽入りました。午前には終わるので午後からはついでに飛び込みの営業とチラシのポスティングをお願いします。あなたは断らないとは思いますが一応お願いという形です]
<伊藤康介>]
[了解です。喜んで働きます]
<よしこ>
[伊藤さんへのクレームが届いています。『こんな会社、二度と利用するもんか!』とすごい剣幕で罵られました。キチンと経緯を説明してください]
<伊藤康介>
[おそらくは犯罪行為に加担させられそうになったので、幾つか質問をしたら急に相手が怒り出しました。私の独自の判断で依頼は断りました。自分は間違ってはいません]
<よしこ>
[断るにしても怒らせてはダメです。あと、あなたが間違っているかどうかは問題視されません。あくまでも会社の評判を物事の中心に据えてください。理解できましたか?]
<土岡二郎>
[顧客を次々と失くし、反省せずに口答えばかりする伊藤さん。そんな適当な人間に大事な仕事は任せられません。どうぞこれからはあなたにとってふさわしい職場で活躍してください]
<伊藤康介>
[短い間でしたがお世話になりました]
<よしこ>
[これからのことは明日話し合いましょう。急に辞められてもスケジュールのやりくりが大変です]
<伊藤康介>
[冗談はよしこさん]
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