第15話 デートの朝

 朝、目が覚めた。

 そして、青ざめた。

 窓から見た日時計は十時を少し過ぎている。

 隣のベットを見るとムサシマルも寝ている。

 今日は安い部屋を探すだけといっていたので、そのままにしておいた。


「いたっ」


 寝起きで声が出る。

 筋肉痛だ。体のあちこちが痛い。しかしそんなことは言ってられない。

 慌てて服を着ると昨日、下見をしていた猫像まで走った。

 猫像までこの角を曲がってすぐのはず!


「きゃ!」


 角を曲がると目の前に女性がいた。

 まずい! うなれ俺のサイドステップ。

 ズルッ。

 今日は街中しか行かないと思い、こっちに来た時に身に着けていた革靴だったのが災いした。

 滑り、ぶつかる。

 俺が覆いかぶさるようになってしまった。


「すみません。大丈夫ですか?」


 俺はすぐ立ち上がり、女性に手を差し伸べた。

 ふわりと長い髪の胸の大きい女性だった。巨乳!


「ぃぇ」


 消え入りそうなその声は澄んでスッと心を吹き抜けていった。


「本当にすみません。急いでいたもので。お怪我はないですか?」


 差し伸べた手をそのままに、女性は自分で立ち上がった。


「だいじょうぶ……です」


 女性はそれだけ言うとそそくさと去って行ってしまった。

 ふんわりとした雰囲気の控えめな、どこか怯えているような感じの女性だったな。

 外に出ず、ずっと家で本を読んでいそうな、おとなしい感じだった。


「いかん!」


 俺は周りに注意しながら待ち合わせ場所に急ぐ。

 猫像は待ち合わせ場所によく使われているようで、多くの人が集まっていた。

 汗を拭き、息を整えながらレイティアを探す。

 いた! きれいな金髪を下ろし、可愛らしいワンポイントの花が付いた麦わら帽子をかぶっていた。

 空色のワンピースにその髪の色と合わせたような黄色の細いベルトを腰に巻き、小さな鞄を手に持ち、

 背の高い男と話していた。


 男!?

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