第2話 子供の森
子供も大人も自宅にいる。各自の部屋にいるか、リビングにいても思い思いにことをするだけで会話もない。
掃除もロボットがやってくれる。資産を減らさないために子供は一人か二人。そんな生活が平均的な社会においては、家庭には閉塞感が漂い、フラストレーションが溜まるだけだった。ちょっとした会話で不機嫌になる。さらに会話が減る。食事のタイミングは合わない。各自が好きなものを食べる。情報や感覚の共有は無くなる。
はたからみたら味気ない生活のように見えるが、本人たちはいたって満足している。
そんな生活が続くと、仮想のコミュティーに飽きた子供たちは、現実のコミュニティーを求めて大人たちの目の届かない場所へと集まりだした。
子供の森。はじめは、数時間の滞在だった彼らも、次第に一日の大半をそこで過ごす。そして、帰らないものもあらわれた。
「あの森に子連れで近づいちゃなんねえ。子供を引き込まれるぞ。」
そんな、噂話も広まっていった。森は私有地である。多数の所有者の土地が複雑に入り組んでいる上に、大半は所在不明で連絡もとれない。警察や行政もおいそれとは踏み込めない聖域となっていた。
『曳き子の森』
いつしか、その場所はそう呼ばれるようになっていった。
曳き子森 明日香狂香 @asukakyouka
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