第1話:危ない女神の導きで



 ━━━ん?



「って、まぁ!?

 もうお目覚めですか!?!」




 なんだ?誰だ??目覚め?



 ━━━どこだここ?



 気がつけば、オレは……なんと言えばいいのか、そうだな……


 ここは、森だ。

 オレと同じくらい大きな木、木、木……


 そして、ここは水だ。オレの半身が浸かれるほど深い……澄んだ水だ。


 湖、か?

 オレ……ものすごくでかいはずなのに、普通に広いと感じる……森に囲まれた湖……



 ………………



「お気に召しましたか?ジンガイ様?」



 声の方向を見る。いや、声とは言えない。

 コレは、精神に直接話されている。

 経験があるからわかる。




 ━━━見れば、一目でまぁ、って分かるのがいた。




 ぱっと見、人間だ。

 胸とかケツが、見てわかるほど丸いし出っ張ってるから、多分女。

 暑いのか?なんか、服、っていう鱗とかの代わりの奴が、所々切れてたりなかったりしてる。



「あら、コレは一応、女神としての格好というものですわ」



 ……格好は知らないが、やっぱりお前、頭の中読めるんだな。


 まぁ、


 水の上に立っている時点で、おかしいけどな。




「ええ、女神ですもの」



 ……思い出したぞ、メガミ……女神か。


 神が確か、世界やら人間、命を作った何か。

 女神は、それの女版。



「はい。流石は、知能がお高い方です。

 他の方ですと、その説明だけでどうしても長い時間を使ってしまいまして……」



 ━━━オイ。


「は!はい、何用でしょう……!?」


 何用?分かるだろう??




 オレは死んだ。なぜ生きている??


 ここはどこだ??


 お前は…………オレの『敵』か?





「て、敵だなんて……!!

 滅相もありません、ありえませんとも!!


 貴方のような、立派なお方の敵に何故ならねばならないのでしょう!?」




 ……ほーう、そんなに動揺するぐらいならそれは信じるが、



 ━━━だからといって、まだお前を信用する気もオレは無い。



「……!!」



 …………近づいて見るとお前、やっぱり人間と同じで小さいな。



 ━━オレが、この口から火を出したら、


 一瞬で消し炭……いや灰も残りはしないなぁ??



「…………」



 ━━━グルルル……!!



 ……おい、女神。オレは問いかけたよな?


 オレはなんで生きてるんだ??

 ここはどこだ??




 消し炭になってもお前はそれに答えられるのか???




 ━━グォォォォ……スゥゥゥ……!!




「お待ちになって!!」



 オレが火を吐こうとした時、その女神は、



「ま、待ってください!!まだ『プラズマ火球』を放たないで!!

 ああやだ、こんな嬉しい時なのに、私ったらお化粧が……!!

 ちょ、ちょっと準備をば!!


 出来ればそのあと存分に、あなた様の喉の特殊生体器官によって電離させた大気プラズマを吐く技をどうか!!」



 ━━━なんだこいつ?


 なんでここまで嬉しそうなんだ?

 発情期みたいな顔してる。




「はっ!!

 ……やだ、私ったらつい……嬉しさのあまりつい……」


 死ぬのが嬉しいってバカか?


「プラズマ火球で一瞬で灰も残らず蒸発するだなんて……放射熱線で焼かれる次には名誉な死に様です……♪」


 オレはオレの技だけど、あの火で焼かれるのは嫌だぜ


 ……変な奴だなぁ、女神って人間とは違うのか??



「まぁ、あんなエサ兼吹き飛ばされて死ぬ役用の方々などとは、違いますわ」


 ……焼くか。


「わぁ……♪」


 辞めた、気持ち悪い。

 なんか…………ギュオウとは違う邪悪さを感じて、嫌だわ。








「改めまして、私の名前はハティ。

 この世界の女神をしております」


 頭を下げるのか?オレみたいなケダモノに?


「ケダモノだなんて!!

 貴方は怪獣!

 神に等しい自然の猛威、命をもつ災害!!

 ケダモノなどという下等な物などではありません!!」


 ……なんでそんなに必死なんだ?


「当たり前です。私は……ずっとあなた方巨大なるもの達の戦いを見てきました。


 怪獣。


 ある時は、人の過ちから生み出され、またある時は自然の調停者として。

 中には私同様の……いえ、私のような矮小な存在と思えない偉大なる神格を持って生まれる、素晴らしき存在……♪」


 だからなんで、発情期みたいな顔してんだ?


「つまり、貴方はケダモノなどではないのです!!ええ!!」


 コロコロ表情が変わるな。


 ……まぁ良いけど……で、


「はい!ジンガイ様がここにいる理由ですね!


 実は……貴方の世界にも、神はいるのですが……」


 ……なんで悲しそうな顔になるんだ?



「…………あのギュオウだけならまだしも……他の神達は言うのです……


 『怪獣などどうでもいい』


 と……」


 どうでもいい?

 邪魔だとか、迷惑じゃなくって??



「あのバカどもは分かってないんです!

 頂点捕食者の選定が間違っていることも、怪獣という素晴らしい存在による恩恵も、なにも!!

 邪魔というのであれば、まだ分かります!!

 自分の言うことを聞かない命は要らないっていう気持ちは、1000歩譲ってまだ!!


 どうでもいいって何ですかどうでもいいって!!


 どうでもいいっていうのなら怪獣が生まれる原因作ってんじゃねーって話なんですよ!!!


 ぺっ!!!!」


 ……何だお前?何に怒ってんだ??



「……だからぁ、快く貰ったんですぅ♪」




 何だお前?やっぱ発情期か?

 てか、


 まさか……!!



「他の世界でも、神の合意を得て魂や肉体ごとの命の譲渡や貸し出しはよくあることなんです♪

 だから、まとめて貰っちゃいました♪」



 ……悪いな、だいたいわかった。

 見るにはこれしか、ねぇ。




 ━━━━キィィィィィ!!!



「へ、あ!?あぁ!?それってぇッ!?!」



 脚に感じる熱。

 これを解放してやれば……オレは


 腕を伸ばし、薄くする。


 オレの中の炎を燃やして、脚から吐き出す!!



 シュゴォォォォォォォォッッ!!



「やっぱり飛んだぁぁぁ!!

 あぁ……最高のアングルですぅぅぅぅぅぅぅ━━━━━………………!」




 うるせぇのが消えているうちに、オレは森の上を飛んでいた。


 海にいる亀みたいだとか、言われてたな人間には。

 実際、見たことがあるがよく似てた。


 ━━━だが、あの時と違ってご機嫌な空の散歩じゃあない。





 キチュンッ!!キチュンッ!!

 キィィィッ!!


 ちょっと行った森の入り口、荒野の近くで、馬鹿でかいクモとカマキリが喧嘩している。



 キシャァァァァッ!!!

 グワァーッ!!


 向こうでは、三日月みたいな頭の二足トカゲが、髑髏みたいな頭の二足トカゲと縄張りを争う。


 キィュゥウィ!キィー!!


 湖からはなんだかウナギみたいなツノのくるくる回る目のない奴が顔を出して、小さいトカゲを長い尻尾で捕まえている。




 わー!うわー!

 ギャァァァァンッ!!



 バカな人間が、背中がトゲトゲの4足歩行のトカゲを捕まえようとしてか、縄の端で振り回されている。


 ……どう見ても人間のせいっぽいから助けないでやろう。

 しかし、戦車も鉄砲もないのか。

 少しかわいそうだ、アレじゃあ持って数分━━━━━━



 ピキャァァァアアアァンッ!!


『あぶねーぞ前見ろ!!』


 キュルルァァァアアアァンッ!?


『ウワッ!!』


 何だ今の!?

 ギュオウよりも速い……!!

 しかもデカイ鳥……!?



「━━━気に入っていただけましたか?」


 なんだと!?

 いつの間にお前、オレの頭の上で立っていた!?


「これが、私の世界です。


 怪獣達が自由に暮らせる、


 いえ?


 怪獣達によって調和が取れる、怪獣という存在に為の世界……♪」


 ……


 ……オレは、どうやら、



「さぁ、私は貴方をどうこういたしません♪

 どうぞご自由に、そこらへんの街を蹂躙しても、怪獣達と戦っても、何をしてもいいのです。


 だって、貴方は怪獣。


 神々であり、いえ神の中の神である存在なのですから♪


 そのくらい当然の権利です!」



 …………とんでもないところに来てしまったらしい。




       ***

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