02 青春

 ぼくはM。『アーケードナイン』のプレイヤーネームはMと表記されているからだ。

 ぼくは高校生に逆戻り。友人が持ってきたゲームの世界〈VR〉のなかにいる。


 大急ぎでパンを加えて学校へ登校している真っ最中だ。


「ほほふはひゃひふーおふるのはよ(ここからスタートするのかよ)!」


 口の中にパンがあり、うまくしゃべれない。

 学校までの距離は坂を下るからスタートされた。


「おい、ちんたらしてんじゃねーぞ」


 挨拶がてら振り返ると、肉を下ろしながら自転車に跨るKが無表情で走っていた。


「なんで肉を下ろしながら登校しているんだよ! ありえねーだろ!!」


「そうだぞ、俺を見習え」


 Sも同じように登校してきた。自転車ではなく走りのようだ。


「S! てっ…お前もかーい!」


 肩からぶら下げたテーブルの上にスープを飲みながら走っている光景だった。


「お前ら二人そろってありえないだろ! 登校しながら肉を下ろしたりスープを飲んだりと、どこの漫画だ!!」


 SとKは二人顔を見合わせた。


「そうか…これが普通なんだ…」


 なにかガッカリとさせた雰囲気となった。

 パンを加えて登校するのも日常的にしているものではないが、ここまで落ち込むものなのだろうか。そうこうしているとTが遅れて登場した。


「ごめん、遅れた…」


 ようやく普通に戻れた。

 そう思い、振り返った。


「待った?」


 自転車で漕ぎ、かごがある場所に鉄板で肉を焼いている光景だった。


「そこまでして肉を食いたいのか!!?」


「えっ、だって肉はスタミナ回復と攻撃力強化アイテムでしょ?」


「それはゲームが違うって…もういい、疲れた」


 三人のツッコミをしていたら疲れてしまった。部活を終えた後のような疲れだ。


「おっ、もらっていいか」

「俺も、どうよ」


 仲好く三人が慎ましく分け合っている。


「ぼくにもなにか分けてくれよ!」


 SとKが互いに見合わせ、ぼくに向かって人差し指を向けた。


「だってお前、交換するものねーじゃん」


 登校するだけでハブられているのか?

 青春てそんなものだったのだろうか…?


「えっ…」


 キーンコーンカーンコーン チャイムの音が鳴りだした。


「やべッ! 急ぐぞッ!!」


 慌てて自転車をこぐ。SがKの自転車に跨る、続けてぼくもTの自転車に乗ろうとしたら「ごめん、定員オーバーなんだ」とさっさと漕いで行ってしまった。


 ぼくは遅れて学校に到着し、教室に入るなり、先生に怒られた。

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シルフィクロニクル にぃつな @Mdrac_Crou

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