01 SC(シルフィクロニクル)
「さっそくやってみるポ」
水面が青く、底が見えない浜辺でぼくら四人は集まって、特訓していた。
『シルフィクロニクル』。
今年発売されたばかりの新作でぼくから誘ったゲームだ。
魔法玉と呼ばれるアイテムで魔法が使えるようになる。魔法玉ひとつにつき一つの魔法がインプットされており、いま、だれが魔法が使いこなせるか学んでいる最中だ。
「≪ウィンド≫」
つむじ風となって砂が舞い上がった。
風属性の魔法だ。
「Sは風属性が得意ッポ」
「俺の番だな」
Sがやれたんだ。俺でもできるさと自信満々にガッツポーズをとる。
Tが魔法玉を片手に魔法を発動しようと踏ん張る…が、一向に発動しない。
「Tは向いていないポ」
「くそぉ~」
悔しそうに立ち去る。
「つぎはぼくの番だ」
Kから魔法玉をもらい、魔法を唱える。
すると、Kに向かって白い光の粒が纏った。
「ケア――回復魔法ッポ」
Tが唱えた魔法は回復魔法。
マスコット的な梟のような猫のような外見をした生物は拍手しながら飛び跳ねていた。
「さて、最後ッポ」
ぼくの出番だ。
Kみたいに魔法が使えないなんて言うのはイヤダ。
ぼくもなにか魔法が使えたらなと思いながら、Tから魔法玉を受け取り唱えた。
「ファイア、サンダー、ウィンド、ストーン、ケア、レイズ、ダーク、ホーリー、スロウ、ストップ、シェル、プロテス、カーズ、バーン……」
思いつく当たり口にしたが、なにひとつ発動しない。
「Kと同類ッポ」
「いや、まだだ…!」
あきらめたくない。
せっかくファンタジーの世界でみんなと一緒にプレイできる。
それを仲間外れにされたうえで、Kと同類だと思いたくはない。
せめて、一つだけでもいい。
覚えたい。ただ、それだけなんだ。
ハッ…まだあった。
まだ唱えていない魔法がある。個人的に好きだが、現実世界では苦手なものだ。
「≪ブリザド≫」
唱えた。
砂ばかりだった場所に氷の花が咲いた。
「すごいッポ。」
氷属性の魔法を見事に発動で来た。
「これで全員使えるようになったッポ」
「待てよ! 俺だけ理不尽じゃねーかよ!」
さっきまで落ち込んでいたKが貸せとぼくから魔法玉を奪い取り、両手でつかみながら俺にだってできると何度も唱えながら力を籠める。
パキン!
「あ…」
魔法玉が割れた。
あまりの力を込めたことで魔法玉が耐えられなかったようだ。
「終了ッポ。K以外は魔法について学ぶッポ。Kは魔法以外について学ぶッポ。もちろん、魔法だけがこの世界における縛りじゃないッポ」
マスコットはKを励ましているようだが、Kは悔しそうにしていた。
それもそのはず『このゲームは三人まで』と言われているようなものである。
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