01 青春

 いまだに学校に通う夢を見る。

 教材を持って、みんなと一緒に授業を受ける光景だ。


 社会人になって今なお、見る。

 学校に行かなくてはと教材や勉強道具をカバンの中へとしまい、慌てて駆け込む。授業中に持ってきたはずの道具が消えており、慌てることもあった。


 一瞬だけ気が緩むと、教室にいたはずのみんながいなくなっていることがある。みんなを探して教室を出るが、そこは異質な空間に変わっていた。


 教室であって、教室じゃない。学校じゃないんだ。

 廃墟のようで暗くジメジメとしていて息をするだけで辛い。


 そんな場所で不気味な奴に追われる。逃げて逃げて、逃げるがそいつは追ってくる。しつこく付きまとってくる。逃げられないと悟った時、夢から覚めるのだ。


 そんな夢の話を『アーケードナイン』のネットワークに通じる仲間たちに話した。みんなは個々に感想を述べたりして、相談に乗ってくれるいい奴らだ。


 ある時、Sから提案が来た。


「学校――か、なぁ、その夢、終わらせてみようか」


「ん? どうやって」


 Kが食いついてきた。


「ちょうど昨年発売した『青春』というゲームがある。いまから、ダウンロードしたものをオンラインに繋げてみんなと一緒にプレイする。もちろん、みんなとはつながっているから無料だよ」


 『青春』とは、かつて経験できなかった数々の学校のイベントをもう一度楽しめるという架空の学校生活。

 プレイヤーは生徒となって、授業から部活、帰宅とあらゆる面でイベントが発生し、その問題に直面するというものである。


「戦うようなアクション性から様々なものが組み込まれているゲームだ。『アーケードナイン・ランキング』4位のゲームだ」


 送られてきた資料やプレイ内容の画像や映像がSから送られてきた。

 中身見るあたり、面白そうだ。


「これで恐怖ももしかしたら克服できるかもな」


 Sの提案通り、『アーケードナイン』の画面上に『青春』というタイトルで表示された。


「プレイヤー以外はAIが搭載されている。複雑なものでも回答できるようにプログラムされているそうだ。『青春』に似合った言葉以外のものは答えられないそうだ。まぁ、卑猥なことを言う人はいないだろう」


 Sがゲーム開始ボタンに触れようとしたとき、Kは涙ぐんでいた。学校へ行けなかったことを過去の自分と重ね合わせて。


「K、涙はゲーム終わるまでとっておけよ」

「おおう…!」


 ティッシュで鼻をかみ、いざゲームの世界へ入った。

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