遊軍4(天王寺視点)

 それからどれくらい経っただろうか、周囲は地面がえぐれ、木々は倒れ、周囲が元あった風景とは縁遠い変わり果てた姿になっても、なお攻撃の手を緩めない。


  ある時は木をへし折り投げつけ。 また、ある時は視界を奪うために今まで以上に砂埃を立て、またある時はフェイントを増やして混乱させようとした。 しかしそのどれもが目の前のドワーフには通じない。


 ……いや、通じてはいるのだ。 その証拠に防いでいるドワーフは呼吸を乱し今にも倒れそうなほど顔を青くしている。 そんな状態まで追い込んでおきながら、攻撃は未だ一撃もドワーフをとらえることは出来ていない。


 信じられなかった。 顔が青くなっているため次の攻撃こそ当たるだろうと渾身の力で殴りつけるが結局防がれる。 しかも、アタイがこれだけ本気になって攻めているにも関わらず相手は反撃をしてこない。


「………止めだ」


 魔力を消費して、体の限界に近い攻撃を続けたため大粒の汗を拭いながらアタイは攻撃を止めた。


「た……助かった」


 一方ドワーフは、アタイの攻撃を一撃も受けていないくせに、その場に仰向けに倒れ込むと大きく息を吐いた。 その姿が非常にムカつく。


「おいおい、確かにお前に一撃も食らわせられなかったが、一応アタイは敵だぞ? 無防備さらしてどうすんだよ」


「ああ、そうか。 確かにそうですね。 ……ですが、忠告をするところを見ると不意打ちは嫌いなんでしょ?」


 アタイの忠告で一応に上体を起こすドワーフは、ムカつく笑顔を浮かべて言葉を返す。 その対応だけでもムカついたが、ドワーフが発した言葉が当たっているだけに、自分の考えが見透かされているようで更にムカついた。


「……面白くねぇからな。 まあいい、それよりも協力してほしいことがあるとか、ぬかしてやがったが、それはなんだ? 一応聞いてやるから、簡潔に言ってみろ」


 アタイの言葉に反応して先ほどまで浮かべていた笑顔を引き締めて表情に影を落とす。


「……俺の国の国王を助けてほしいんです」


「……簡潔にとは言ったが、それだけじゃ意味不明すぎだろ。 説明しろ」


 私の言葉に失礼しましたと謝罪をしたドワーフは、言葉を続けた。

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