遊軍5(天王寺視点)

「我々の国では、現在クーデターが起こっています。 国の現在の状況やクーデターの原因は……すいませんが、あなたにはお話しできません」


 ドワーフは状況を説明できないことに対して、すまなそうに目を伏せたが、そんな状況をアタイが聞いたところで、どうしようもないので別にどうでも良い。


「よく分からないが、つまりはお前の国で暴動が起きて国王が暴動を起こした主犯に捕まったから助けてほしいという事か?」


「概ね、その通りです」


「バカじゃねぇの?」


 肯定したドワーフに対して素直な感想を述べる。 この言葉は目の前のドワーフもある程度覚悟していたのか、表情一つ変えることは無かった。 その様子を見て、アタイは言葉を続ける。


「戦争の真っただ中で、しかも戦争をしている敵国の、もめ事をアタイ達の国が助けると思うか?」


「おっしゃりたいことは分かっています。 ですが我々も時間が無いのです」


 ドワーフは俯いて周囲を沈黙が支配する。 敵国に交渉しに来るくらいなのだ、ドワーフの国王は相当ヤバい状態なのだろう。


 ああ、本当にもったいない。 土塊人形(ゴーレム)なんかじゃなく生身の亜人と殺しあえる機会なんて、そうそうないのに、断らなければいけないなんて本当に残念でならない。


「事情は分かりました。 良ければ薬師寺様に私が話を通しましょうか?」


 アタイが残念がっていると、突如姿を現した白髪の人物が現れた。 とても聞き馴染みのある凛とした声。 アタイは、この手の姉御の登場に慣れているから普通に対応できるのだが、目の前のドワーフは、そうでなかったらしく突然現れた姉御に対してビクッと肩を震わせていた。 そんな様子を無視してアタイは姉御に話しかける。


「姉御ぉ、盗み聞きは正直どうかと思いますよ?」


「姉御は、やめなさいと言ってるでしょ?」


「前から思ってたんですが何でダメなんです? アタイより圧倒的に強いから、尊敬の意味を込めてるつもりなんですが、それと、その髪の色は何です? 白髪ってイメチェンですか?」


「……そんなことはどうでも良いでしょ。 とにかく、ちゃんと椎名さんって呼びなさい」


 渋々、椎名の姉御の言葉に頷くと、我に返ったのかドワーフが声を出す。


「本当に話を通してくれるのですか? 我々の国を救ってくれるのですか?」


「国を救うかどうかは分かりません。 全ては国王である薬師寺様次第ですので、あなたは薬師寺様に会うまでに必死に頭を捻って交渉材料を探しなさい。 利益が示せるのならば、きっと薬師寺様は助けてくれるはずです」


「ありがとうございます」


 椎名の姉御の言葉に対して頭を下げたドワーフは心の底から感謝をしているようだった。

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