戦闘開始(荒川視点)ー2

「誰に対してものを言っているのかしら? 私が死ぬわけがないじゃない、石井と共にピンピンしてるわ。 舐めないで頂戴」


 こちらの必死の呼びかけに対して、意外にも余裕そうな返事が返ってきた。 私の視界は敵が埋め尽くしているため見えないが、どうやら返事を聞く限り、二人とも無事なようだ。


 突撃する前に二人にペアを組んでもらったことが幸したな。 石井を1人で突撃させたら、もうすでに死んでいただろうから山口先輩に感謝だ。


「山口先輩、石井を連れて撤退することは可能ですか!? こっちは正直いっぱいいっぱいで、山口先輩方面の敵までは対応しきれないんです」


「撤退? 無理ね、数を減らさないとどうしようもないわ」


「そこを何とかしてください!! じゃないと全滅します!!」


「そう? なら逃げようかしら、全滅は嫌だもの」


 軽く帰ってきた言葉に対して、撤退できるんかいッ!! と心の中で突っ込みを入れる。 


「こんな時にまで、ふざけられるなんて、本当に大した先輩だよ」


 先輩には決して聞こえない声でボソッと呟くと、自然と体の余分な力が抜け、少しだが余裕を取り戻した。


「山口先輩、ちゃんと石井と一緒に逃げてくださいよ? たまに後輩である私のことをないがしろにするんですから、こんな状況なんです、忘れてたじゃ済まされませんよ」


「アナタだからないがしろにしてるのよ、石井にはそんなことはしないわ。 それに、戦いに関してはアナタには遠く及ばないけれど、カワイイ後輩を1人連れて逃げるくらいの障壁は張れるわよ。 余裕で逃げるから荒川もせいぜい頑張って生き延びなさい」


「そのカワイイ後輩をもう1人増やす気は無いですか?」


「残念、私の障壁は二人用なの、アナタは自分で何とかしなさい」


 相変わらず厳しい先輩だ。 だがソレだけ私を信頼してくれているのだろう。 だとしたら後輩として先輩の期待に答えなくては。 先ほどまで諦めていた荒川の目に再び闘志の炎が灯り剣を握る。


「了解です山口先輩、それではまた後で会いましょう!!」


「ええ、アナタがせいぜい惨めに死なない事を祈ってあげるわ」


 山口先輩の言葉に自然と笑みがこぼれた荒川は、ゴーレムに向かって再び攻撃を開始した。

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