飲み会ー2
「どうしますか。 必要なければしまいますが?」
一向に栓を抜こうとしない俺達を見て椎名が話しかけてくる。 流石にこれは止めた方が良いだろうと思い、椎名に酒瓶を返そうとしたのだが、それをドワーフ少女が制止する。
「ちょっと待ってちょうだい。 開けていないとはいえ、出されたお酒を残すなんてことがあれば、偉大なる先祖に泥を塗ることになりかねません。 ……いただきましょう」
「本気ですか? 説明を聞くだけでもヤバそうなんですが」
「ココで逃げたら負けです。 挑戦もせず逃げる事だけは出来ません」
震える手で受け取るドワーフ少女は瓶のふたを開ける。 瞬間、密度の濃いアルコールの匂いが鼻を刺激する。 グラスに注ぐと緑色の液体がドロリとグラスを満たした。
ドワーフ少女は決意したように一気にグラスを傾け酒を飲み干す。 その瞬間ドワーフはその場に倒れ込んだ。
「おい!! 大丈夫か?」
「アレはヤバイ、想像以上。 あんなお酒があるなんて。 しかし、開封してしまった以上もう後には引けないわ。 何としてでも飲み切らないと」
ヨロヨロと立ち上がり震える手で再びグラスに酒を満たす。 その光景を見て正気とは思えなかった。 種族的な理由で残すわけにはいかないのだろうか? 俺なら残すが、そういう問題では無いのだろう。 決まり事とはそういうもんだ。
だが、一人でアレは流石に無理がある。 一杯でアレなのだ一瓶飲み干すには地獄を何度も超えなければならないだろう。 一人の少女が頑張っているのに俺は見ているだけで良いのか。 答えはNOだ。 酒で満たされたグラスをドワーフ少女から奪い取る。
「おい、何を?」
「元々、これは俺とアナタとの勝負だろう? なら俺も飲まなければフェアではないじゃないか」
「……すまない、助かる」
ドワーフ少女の感謝の言葉を聞き流して酒を一気にあおる。 ドロリとした液体が口内を蝕み、焼けるような熱さを感じる。 なんだコレは!? 舌触りは最悪。 味も滅茶苦茶だ。 これはもう人間の飲み物では無い。 アルコール度数のみを極限まで上げたため他の要素を切り捨てて完成した最悪の酒だ。 何とか口から喉を通って体内に流し込むが、体に入ってからも存在を主張し続ける。 口が、喉が、体が熱く焼けるようだ。
「きつすぎる。 本当に酒なのかこれは?」
たった1杯飲んだだけで視界がグラつき、体が上手く動かせない。 もはや兵器だろうコレは。
「大丈夫か?」
ドワーフ少女が声を掛けてきたが、彼女も相当酔っているのか机に突っ伏したままだ。
「時間をかけるとヤバイな。 間髪入れずに次に行くぞ、でないと空になどできる気がしない」
「確かにその通りね。 次に行きましょう」
少しずつ量を減らしていくにつれて、まるで強大な敵を協力して倒す錯覚に陥ってきた。 それは向こうも同じのようで、初めに憎まれ口をたたかれた様な見下した態度はそこにはなく、俺を認めてくれたかのような感情を感じた。 そして数十分の時間をかけ俺たちはこの酒を飲み干し。 互いに気を失った。
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