飲み会

 その光景は異様だった。 互いに向かい合った2人は、まるで水でもがぶ飲みしているかのように大量のアルコールを飲み続けている。 普通であれば脳はふやけ思考は即座に夢の世界へと誘われるだろうが、2人はペースが変わることなく次々と空瓶を量産し続け、ついに10本目となるところで俺は手を止めた。


「……酔っぱらうとかそういうの関係なしに、普通に気持ち悪くなってきたんですけど。 もう止めませんか?」


 テーブルを挟み向かい合って座っているドワーフ少女はあれだけ酒を飲んだにも関わらず酔っぱらう気配は無い、それどころか顔すら赤くなっていなかった。


「確かに、量的な意味でキツクなってきたわね。 本当にコレ度数が一番高いお酒なの?」


「そのはずですが、式典用の酒ですし、悪酔いしないためにあまり度数の高い酒が置いてないのかもしれないですね。 …椎名、もっと強い酒は無いか?」


 このまま普通に飲み続けても埒が明かないので傍で控える椎名により強い酒を要求する。 すると椎名は俺の声に素早く反応して手品のように何もない空間から酒瓶を1本取り出した。


「でしたら、こちらがよろしいかと」


 酒瓶を椎名から受け取る。 椎名から受け取った物は今まで飲んだ酒とは違い、飲む気にならないような濃い緑に染まった液体が詰まっていた。 そして色合いもだが加えて気になったのが酒瓶に張り付けられているラベルである。 名称が記載されている横に小さくドクロマークがついている。


「……コレは酒ではなく毒なんじゃないのか?」


「確かに、出来れば、これは私も飲みたくない。 度数が高いからとかじゃなく純粋に美味しくなさそう」


 ドワーフ少女の言葉に素直にうなずく。 お酒というジャンルからかけ離れた外見をしているソレは、渡す瓶を間違ったとしか思えなかった。


「美味しくは無いですね。 ですが度数は先ほどお2人が飲んでいたお酒とは次元が違います。 何しろ蓋を開けてスグに飲み干さなければお酒が揮発してしまって量が減るんですよ」


 本当に飲み物なのかソレ? 流石にこれは未体験のゾーンだ。 だがソレは目の前のドワーフ少女もそうだったらしく、何とも引きつった表情を浮かべていた。

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