デート当日ー2

「まあまあ、お2人とも、本日は楽しいデートなんですから、謝るのはもう無しにしましょう。 それより石井さん、今日はいつもより可愛らしい格好ですね」


 空気を変えるため気を使ってくれたのか、椎名が石井ちゃんの恰好を褒めた。 確かにこの日の為に石井ちゃんはいつもの服装ではなく今日は、ピンクのワンピースに胸元にブローチを付けて、髪もサイドテールにまとめていた。


 それに比べて俺は、いつもの服装である。 誘った側が気を使わせるだけでなくオシャレすらしてこなかったことに対して少しだけ自身を恥じた。


「せっかくオシャレしてきてくれたのに、俺は普段来ているスーツで……なんかゴメン」


「いえ…見慣れ……ている格好の…で…も…十分かっこ……いいです」


「そ…そう? ありがとう」


 顔をほんのりと赤くして、目を伏せつつ俺に向かって賛辞を投げかける石井ちゃん。


 まさか、お世辞を言われるとは思わなかった。 本来ならばフォローされるような恰好をすべきではないのだろうが、あいにく俺も椎名もこのタイプの服以外は寝間着しか持っていない。 仕方が無いと言えばそれまでだが、それならばせめて髪型を変えるとかアクセサリーを付けるだとか、色々やり方はあっただろうと、今更ながらに自分を責める。


「さて、今日のデートプランですが。 石井さんに念話で飛ばしたように、とりあえずは街に出てみようと思うのですが、よろしいですか?」


 俺と石井ちゃんの会話に割って入ってきた椎名は本日の大まかな計画を説明する。 椎名の話すデートプランは大まかに説明すると街に行き、露店やを物色しつつ、ご飯を食べて演劇を鑑賞し帰宅する。 そんなありふれな内容だった。


「俺は別にいいんだが、街ってことは校外に出るんだろ? 魔物が出るんじゃないのか?」


「街に行く程度の距離なら問題ありません、大丈夫です」


 ニコリと笑顔を見せつつ椎名は答える。 椎名の仕事は俺を守る事なのだから、魔物が出現する校外へ出るのは否定的だと思っていたんだが、どうやらそうでもないらしい。


「あの…椎名……さん」


「何でしょうか石井さん? もしかして、他に行きたい場所等がありましたか?」


 珍しく石井ちゃんが自分から椎名に話しかける。 不安そうな表情も読み取れたため椎名はエスコートする場所が悪かったのだろうとあたりを付けて答えたようだ。

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