デート当日

 空は雲一つない快晴、気温が昨日より暑いことを除けば、絶好のお出かけ日和と言っても過言ではないだろう。 だが、そんな過ごしやすい天候にも関わらず、校門前での人の集まりは乏しい、俺達のように外出しようとする生徒は、あまりいないようだ。


「椎名、今日は休日だよな? なのに人があまりいなんだけど普通は外出とかしないのか?」


「校外は魔物が出ますからね、わざわざ休日に命のやり取りを好き好んでする人間は、この学校にはいませんよ」


 たしかに基本的に座学だけの学生が校外へ出る事は危険極まりないのだろうと、椎名の言葉に納得する。


「まあ、それでも外出したい生徒は、特殊科と一緒に外出するか、冒険者に依頼をして安全に街まで送ってもらうかしますけどね」


「冒険者?」


「護衛や魔物の駆逐、未開の土地の調査など、国を空ける事の出来ない我々では出来ない仕事を請け負う人たちですね。 今の時期なら演習が近いですし、彼らに戦闘の指南を依頼している生徒も多々います。 ここに来る途中でも木剣をつかって訓練をしていた人たちが何人かいましたよね。 アレを指導していたのも冒険者ですよ」


「そんな事までやってるのか? 何でもありだな」


 元の世界ではなかった職業なだけあって少しだけ興味がわいた。 特に未開の地の調査というのは興味がある。 子供っぽいかもしれないが、未知を探すことは男のロマンだからなぁ。


「菊池さん、冒険者の職業に興味があるなら、ご紹介しましょうか? 後輩に腕の立つ冒険者が一人いるんですよ」


「本当に? 是非とも話が聞いてみたい、頼んでいいか?」


「ええ、もちろんです。 ですので、とりあえずは冒険者の話はココで終わりにして、本日は隣にいる石井さんとのデートを楽しみましょう」


 んっ? 隣にいる? 椎名の言葉に疑問を抱き振り向くと、隣に石井ちゃんがひっそりと立っていた。


「うぉ!? びっくりした、石井ちゃんいるなら話しかけてくれよ」


「あっ……ごめんな…さい」


 しどろもどろに言葉を返す石井ちゃん。 どうやら俺と椎名が話し込んでいたため、話しかけて良いのかタイミングがつかめずオロオロとしていたらしい。


「いや、こちらこそゴメン。 気が付かないなんて、どうかしていた」


「いえ…私が……声を掛け…られなかった…のが悪い……んです」


 俺に引け目を感じたのか、石井ちゃんはペコペコと頭を下げて申し訳なさそうに謝罪をしてきた。

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