拷問ー2 ※暴力的表現が含まれています

「やめて……くれるのか?」


「ああ、やめてあげる。 最初から、そのつもりだったしね」


 彼女がパチンと指を鳴らす。 ダチは糸が切れた人形のように地面に倒れ込むと同時に、あれほどボロボロだった体が一瞬で元通りになっていた。


「そして次はお前の番な」


 再び指をパチンと鳴らす。


「……えっ?」


 ズドンとした衝撃が体を揺らす。 見ると胸が太い棒のようなもので貫かれていた。


 だが、痛みはない。


「痛みはないし血も出ないだろ? 首から下の空間を凍結してるとこうなるんだ。 勉強になったなクソ虫」


 棒を引き抜かれると肋骨があらわになって内臓の赤々とした色合いが目に飛び込んできた。


 顔から血の気が引いて思わず吐き気が込み上げる。 痛みがないとはいえ人間の内臓、しかも自分の臓器を見てしまった。 すぐに目を伏せたが今見た光景が脳に焼きついて離れない。


「おいおい、目を瞑るのは反則だな」


『目をそらすな』


 その言葉に、アタイの意志とは関係なく目が開き、再び見たくもない自分の臓器が視界に入った。


「…な…なにをした」


「私はオマエのリアクションが楽しみなんだ。 目をそらせるようなつまらないことを受け入れると思ったのか」


 ケラケラと、バカにしたように笑う彼女に対して、アタイを包み込んでいる恐怖が更に数段跳ね上がった。


「さてと、自分の内臓見る機会なんてないだろ? よく見とけよ」


 そういって今度はナイフでアタイの腹部をゆっくりと切り開く。


「やっ……やめ」


「なるほどな、 お前の体はこうなっているのか……」


 彼女は傷口に手を突っ込みグチュグチュと音を立てて内臓をかき回す。


「やめろッッ やめてくれッ!!」


 アタイの言葉は彼女には届かない。 今度は体の中から骨を一本一本折っていく。生まれて今まで聞いたことのない音が頭の中で反響してより一層恐怖で支配される。


「怖がるなよ、私の癒しの魔術は見ただろ? 死にかけていたお前の友達も、お前らが傷つけた石井さんも、スグに治せるんだ。 菊池さんに殺すなと命令を受けている以上、死なない程度で遊ぶから安心しな」


「あそ…ぶ」


 その言葉の意味を理解した瞬間、更なる恐怖心が全身を包み込む。


「そう、遊びだよ、そして遊びにはルールがある」


 パチンと、目の前の彼女が指を鳴らすと、目の前に先ほどとは別のダチが吊るされ、立った状態で気を失っていた。 それは今の私の状況と酷く似ている。


「さて、一つお前に質問しよう、初めにお前が目覚めた時に何故、先ほどの女は喜んでいたと思う?」


 コイツは何を言っている? 喜んだ理由……まさか!!


「考えが及んだかクソ虫? そう、目の前のコイツが起きるまで、私はお前を使って遊ぶとしよう」


 その言葉を聞いた瞬間血の気が引いた。 同時に先ほどまでの人の原形を保っていなかったダチの姿が頭をよぎる。 あんな姿になるのは嫌だっ!! アタイは必死にソイツの名前を叫ぶ。


「アハハ、そうそう、やっぱり遊びと言っても楽しむためには適当な必死さが大切だよな」


 彼女は満足そうに笑うと、再び私の体に刃物を突き立てた。


「さて、せいぜい良い声で鳴いて私を楽しませてくれ」


 泣き叫び、悲鳴を上げるアタイを彼女は笑いながら様々な方法で痛めつけた。 炎で焼かれたり、毒で徐々に腐らせたり、皮膚を一枚一枚丁寧に剥がされたり。 体中を傷つけ、癒し、飽きるまで繰り返すソレは遊びではなく人体実験や拷問の間違いだろう。


「オキ…ロ……オキ」


 ドレホド時間がたったダロウカ、掠れたコエを出すたビニ血が噴き出ル。 思考はずズイブン前から上手ク働かなイ。 ダガそれデモ叫ばなけれバイけない気がスル。


「オ…キロ……ロ」


 壊れタヨウに同じ言葉をクリ返す。 息が出来ナイほど叫ビ続けるがメノマエノ女がオキル気配はナイ。


「………ロ」


 声がカロウジテ音を出すホドになったその時、今マデ変化がなカッタ女の目蓋がピクリと動いた気ガシタ。


「ォォキィィロォヲォオオッッッ!!!!」


目の前ニイル女の初めテノ反応に今マデニナイほどの大声を張り上ゲル。 喉からブチブチと変な音や逆流してクル血液を口かラマキ散らしタガ、そんなコトハ最早、気にすらナラナイ。


「て……んさん?」


「ハハ…ハ……ハハハッ」


 ヨウヤク目覚めテクレタ女は、私の顔を見て驚キノ表情を向ケタ。 アタイは目の前の女が起キテクレタことが嬉しクテ、思わず泣きながら笑い続ケル。


「なんだ、もう起きたのか。 まだ内臓を引っ張り出している途中だってのに……早いこった」


 ソウ言った彼女は、古い玩具ニハ興味を無くしたのかスグサマ新しい玩具に近ズク。 ダガ思いとどマッタヨウニ踵を返すと、私の耳元に顔をチカヅケルと彼女が囁ク。


「あと、これは忠告だけど菊池さんのお気に入りには今後一切ちょっかいをかけるな、 今回は、この程度で勘弁してやるが、次に何かあればもっと色々とやらせてもらうから」


 その悪魔の警告は、アタイのココロニ深く刻みツケラレ、彼女が指ヲ鳴ラすとアタイの意識は遠クヘト旅立っタ。

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