初めての学校ー5
「ここにいらっしゃいましたか」
勉強を習い始めて、一時間位は経っただろうか? 突然の声で現実に引き戻される。 思わず声のする方を振り返ると、そこには10本ほど飲み物を抱えている椎名が立っていた。
「えーと、……椎名怒ってる?」
「いえ、怒ってはいません、ですが何処かへ行く時には事前に言ってください」
確かに、言葉通り椎名は怒ったような表情は浮かべていない、むしろ悲しそうな表情である。
護衛をしてくれている椎名を煙に巻いたのだから怒られても仕方がないと思っていたのだが、怒るどころか悲しんでいるのが心に響いた。
「そうか、ごめん彼女に勉強を教えてもらってたんだ」
「そうですか、菊池さんがお世話になりました。 お礼によろしければもらってください」
簡潔に椎名はお礼の言葉を述べると、抱えていた飲み物のうち一本を石井ちゃんに差し出した。
「ありがとう……ございま…す」
ぺこりと頭を下げて飲み物を受け取る石井ちゃんは、初対面の時の投げやりな態度と違って丁寧に対応されて少し戸惑った様子だった。
勿論、丁寧に言葉を使ってくれるのならそれに越したことは無いのだが、最初の態度とあまりに違うので、俺も椎名の対応には疑問を感じた。
「えーと、椎名? 石井ちゃんに対する態度がさっきと違うと思うんだけど何かあった?」
「いえ、菊池さんがお世話になったんですから恩人として対応するのは当然です」
何か問題でもありましたか? と付け加えて言うあたり、椎名は義理堅いなぁと思う。
「それと、菊池さん、勉強も結構ですが、もうすぐ日も暮れてしまいます、夜になると魔物が活性化するのでそろそろ帰りましょう」
「そうか、それじゃあ今日はホントにありがとう」
「いえ、わたしなんかが…お役にたてて………嬉しかったです」
「出来れば、明日も放課後にこの場所で勉強教えてもらっていい?」
「はい、わたしで……良ければ」
石井ちゃんと次の日も会う約束をして、その日はその場で別れて、帰路についた。
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