第18話 成功者って何 その三
成功者って何 その三
カオリがショックのように頬を押さえて
「えええええええ! じゃあ、どうすれば! 良いんですか! 見習うべきお手本がないと、何も出来ないじゃないですか」
ケイは、ハァァァァと深い溜息を吐き
「カオリくん。何の為に今まで学校で勉強して来たんだね? 勉強は、考える為の訓練だったんだよ。君は自分で考える事を放棄するのかね? それは…生きているとは言えないよ」
カオリが頭を押さえて
「ええ…じゃあ、どうすれば…いいんだろう。不安だぁ」
ケイが額を抱えて
「特別にレクチャーしてあげますよ。全く…」
カオリが笑顔で
「ありがとう! 教授! 頼ればウドの大木でも使えるですね!」
ケイが眉間を寄せて
「問題を孕む新しい熟語を作らない。一言、レクチャーしましょう。
失敗している者達を見よ、です」
カオリは目が点になり
「え…え…? それじゃあ、失敗ばかりしてしまいますよ!」
ケイが眉間を押さえて
「じゃあ、どうして失敗ばかりする人達は、失敗を続けていると思いますか?」
カオリが頭を抱えて
「同じ失敗する事ばかりを繰り返しているから…」
ケイは肯き
「その通りです。失敗ばかりする人達は、失敗する方法を続けているからです。だったら、失敗している人達を分析して、失敗しない方法を編み出せば良いんですよ。成功者を分析するよりも、遙かに簡単な事ですよね…」
カオリが
「でも、失敗しない方法を見つけたとして…どうしたら…」
ケイは
「簡単でしょう。そういう行動をしなければ良いんですよ」
カオリが
「でも、テレビドラマとか、そういうヤバいのから逃れられないような…」
ケイが頭を抱えて
「言って置きますが…テレビドラマの世界は、現実は存在しません。だってドラマですよ。役者と予算と、視聴率を優先して作られる物語に役に立つ事なんて一切存在しません。いい加減にテレビドラマの影響から脱却するべきでは…」
カオリが
「でも、本当にヤバい状況とか、から…逃れられるなんて」
ケイは首を傾げて
「簡単ですよ。今の世の中、簡単に転職も出来ますし、学校だって選べるんですよ。カオリくんだって、大学を選んだでしょう」
カオリが肯き
「確かに…」
ケイが
「まあ、犯罪を犯した場合は、逃れられませんが…。人生の生きて行く選択は幾つも存在します。それはある意味、逃れられるという事でもあるんですよ」
カオリが
「じゃあ、成功者を見習うより、失敗した人達から失敗した原因を見つけて防げば…」
ケイが
「大金持ちや、偉い人には成れませんが…人生で困った時には大いに役立つ筈ですよ」
カオリが
「じゃあ、人生で失敗しまくっている作者が、余りにも失敗し過ぎて、神呪師や占い師になったのは…」
ケイが渋い顔で
「それが成功しているかは…微妙ですけど…。とにかく、人類は、失敗から色んな事を学んでここまで来たんですよ。成功している人達よりも、失敗している人達を助ける世の中の方が…遙かに社会は、幸せになるとは思えませんか?
誰だって失敗したくないのは、分かります。
でも生きている限り、色んな事をするんですよ。
それには失敗が当たり前に存在して、それによって学んでいく事が人生を生きているって事なんですよ」
カオリが挙手して
「じゃあ、失敗しまくって行きまーーーす」
ケイが首を横に振り
「失敗を目指して失敗するなんて、無意味です。ちゃんと考えて行動して、試行錯誤して、それでも失敗してしまう失敗にこそ意味があるんです。
なんでもかんでも失敗すればいいなんて、愚か者がやる事ですよ。
本物の失敗にぶつかった時に、人はどうすれば良いか?考えて悩んで、行動を起こせるんですよ。
完璧な人生なんて存在しません。
人は完璧ではないのです。不完全なんです。完璧を目指せば目指す程、人は苦しくなって地獄を見ます。
自分が不完全で、変わっていける事を思い、悩みつつ進んでいく。それが人生であり失敗から学ぶ力だと、私は思いますよ」
カオリが首を傾げて
「んんん。熱弁すぎて分かんない」
ケイはガクッと肩を落として
「とにかく、人類は失敗の歴史があります。失敗の歴史から学んで進んでいく事が今を生きる私達の宿題なんですよ」
カオリが
「じゃあ、作者が数年前にMF文庫とか電撃文庫から、『面白くない、分からない、小説を書くに値しない』って送付されたじゃないですか。それから作者は学んだのですか?」
ケイは首を横に振り
「残念ながら…全く学べませんでしたよ。今もどうかは…知りませんが…。その当時、そういうライトノベルの出版社は、出版界でも天下でしたからね…。要するに、どうでも良かったんでしょうね。もし、本当に応募者の為を思うなら…偉そうな感想ではなく。
真摯にここを直せばもっと良くなると…書かれていれば。未来は違ったかもしれませんが…。
そういう事には成らなかった。
失敗を指摘する人も、本当に人の事を思って失敗を指摘しないと、失敗の意味がない事でもありますからね。
今の世の中のパワハラみたいに、怒鳴って怒りをぶつけて、相手に反省を促すなんて、犯罪者の思考程度の事ですからね…。
本当に、人をしっかりと叱れる人なんて今の世の中、いないのかもしれませんね。
アドラー曰く、怒りは所詮…自分の欲求を相手に押し付ける手段なのですから…」
カオリが
「じゃあ、このハゲーーーーーって言った議員がいたじゃないですか。権力者の世界では、怒鳴って相手を叱る事が許されているんですよね」
ケイは遠くを見て
「どんな世界でもやってはいけない事は共通しているんだけどねぇ…」
カオリが遠くを見て
「ほら、偉い人とか、なんか権威を翳す人とか、宗教で神が!とか、言う人達って直ぐに聖域とか神聖とか言いますよね」
ケイは遠くを見て
「だって、人間…自分の欲望を満たせる場所って聖域や、神聖だと思うじゃないですか…。
それって公開してみんなの目に触れさせて話し合わせるべきなのに、自分の醜い欲望を隠す為に、邪悪なのに神聖視するのは、常套手段なんですよ」
カオリが遠くを見て
「結局、欲望に負けるんですね。人間って」
ケイは遠くを見て
「それが人間の本質なんだよね…」
カオリより、成功者って何って思った方は社会学へ。
何だこれ社会学? 赤地 鎌 @akatikama
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。何だこれ社会学?の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます