第17話 成功者って何 その二

 成功者って何? その二


 カオリが困惑気味に

「偶々、成功したなんて。成功した人は、これだったから成功した!なんて言っているんですよ」


 ケイが

「カオリくん。よーく考えてくれ。その成功する人の、その人の置かれていた状況ってカオリくんにあるかい?」


 カオリが考え

「ええ…ないと思いますけど…。でも、成功する人を見習えば! 成功しますって」


 ケイが呆れ気味に

「その成功する人を見習っている人達なんて、沢山いるよ。でも、その成功する人のようにその人達は、成功しているかね?


 カオリが顔を引き攣らせて

「それは…微妙ですけど…」


 ケイが頭を振り

「ハッキリ言いたまえ。誰も成功していない。成功者の二番煎じは、成功しない。そればかり君は見ているよね」


 カオリが

「でも、大学の事は、勉学で成功している人を見習えば、みんな上手く行っていますよ」


 ケイが頭を抱えて

「勉強ってのはね。やり方さえ間違えなければ、誰だって成功するように出来ている。上手く行かない学生は、その学生のやり方にあったやり方が見つからないから、勉学に成功しないだけであって、決して、勉学が出来たからって世の中で成功するとは事はない。

 むしろ、大学や学校で、優秀だって事を見栄にして、自分を貶めている者達の方が多いくらいだ。

 謙虚に学ぶではなく、学校で凄かったから自分はスゴイなんて勘違いして研鑽を怠るなんて、何の為の勉学だったのか…。多くの教えた師達は頭を抱えているよ」


 カオリがムスっとして

「だって、人生で成功する為に勉強をするんですよ! それが勉強じゃあないですか!」


 ケイが呆れて

「あのね。考え方や、理論的な事、実践的な事を学ぶ為に、勉学があるんだ。勉学が達者だからって、成功するなんてあり得ないんだよ。人生でどういう風に学び、生きて行く方法を構築する為に勉強があるのに…。勉強による勉強をするなんて、本末転倒だよ」


 カオリが足踏みして

「屁理屈なんてどうでもいいですよ! 教授は、どうして成功者を見習っても成功しないって言えるんですか!」


 ケイが呆れて頭を抱えて

「屁理屈っていう者達ほど、自分の考え以外を受け入れない閉塞した者達というのに…」


 カオリがケイの耳を引っ張って

「教授…これ以上、ウルサい事を言うなら、あの写真を…バラ撒きますよ」


 ケイがフッと笑み

「いいよ。やれば、別に私のいる立場は安月給の社会学っていう教授職だ。研究室もない。この書類を整理する個室しかないんだから。それで大学での事が終わった所で…この作者の人生のようにそこまでの人材だって事さ」


 カオリが頬をリスのように膨らませるも

「んんんん! 話を私の聞きたい事に戻してーーーーーー」


 駄々こねるカオリにケイは呆れて頭を振りつつ

「まあ、とにかく、どうして…成功者を見習っても成功しない理由には、まず…環境がありますね」


 カオリが怒りを静めて

「環境…ですか…」

 

 ケイは肯き

「ええ…環境です。考えても見てください。もの凄い未来の予想って、現代の世の中には有り触れているでしょう。SF小説とかSF映画とか、本当に未来はこうなるって空想は沢山ある。それを想像できるという事は…それを作り出せる力を持っているという事です」


 カオリが

「じゃあ、直ぐに未来の道具を作ればいいじゃないですか!」


 ケイが呆れて

「だから…環境って言いましたよね。いくら、想像は出来ても、それを作れる環境、資源や工作機、検査機、それを使う人達、その他の多くの環境が揃わなければ、誕生しません。

スマホだってその原型は、戦後くらいに特許としてあったんです。ですが…それを可能とする部品や、工作機がなかった。だから…今まで存在できなかったのです」


 カオリが

「じゃあ、教授は、成功者の条件ってのは偶然って事なんですか!」


 ケイは肯き

「はい。その通りです。その時、偶々、その場所にいたから成功した。それだけです」


 カオリが

「じゃあ、お金持ちの成功者は、偶然にお金持ちになったんですか!」


 ケイは厳しい顔で

「お金持ちの成功者は、お金持ちの親から生まれるんです。確かに、ゼロから立ち上げてお金持ちになった人はいますが…。それは何十億人に一人だけです。

 考えてください。日本の人口の数十倍の人数の内、Amazonのジェフ・ベゾスやマイクロソフトのビル・ゲイツになれる確立は、地球の70億分の一。七十億人の中で一人だけなんですよ。つまり、世の中にいる多くの成功者は、その成功者の親も資産家で成功者だった。そういう事なんですよ。これが現実です」


 カオリが頭を抱えて

「じゃあ、私は…Amazonのジェフ・ベゾスとか、マイクロソフトのビル・ゲイツのようになれないんですか…」


 ケイは肯き

「成れませんね。私も作者もなれません。つまり、カオリくんはカオリくんが蔑む、地球人口の男性9割と同じく、負け組って事です。私も作者もね」


 カオリがケイの腕を掴み

「教授! どうすれば! もの凄く偉くて金持ちになれるんですか! 教授なら知っているんですよね!」


 ケイが眼鏡を押さえて

「そんな方法なんて存在しませんが…。ですが…人生をより良く生きる方法は知っていますよ」


 カオリが掴む手に力が入り

「どんな方法なんですかーーーーーー」


 ケイが

「成功者から学ばない事です」


 続く


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