第9話 会社って何? スリー

 会社って何? スリー


 ケイが

「遙か昔、南米では、多くの国があった。その文明は生け贄をして国を維持していた。これは極端な例だが…その生け贄を行っていた文明は、どれもかしこも滅んで、森や土の下に消えた。南米の文明が近年滅んだのは、ヨーロッパ諸国による侵略だが…。それ以前の南米では、多くの文明が誕生して消えていった。その文明の全てが生け贄という儀式をしていた。これから分かる通り、生け贄をする文明、社会は…崩壊する」


 カオリが

「誰だって死にたくないですよ」


 ケイは肯き

「その通りだ。誰かを生け贄にする組織は、何時か自分が生け贄になると、誰しもが思っている。だからこそ、ちょっとしたはずみで崩壊する。確かに生け贄を行って一時は何とかなるだろう。だが…それも数十年とは続かない。生け贄が始まった頃を調べると、世界的に環境が変わって食糧難になった頃と重なる。知恵も技術もない支配者という愚者が、自分の保身と、責任回避の為に生け贄をやっていた。何時の世も厳しくなった時に、支配する者は、愚行を行うのが世の常なんだよ」


 カオリが

「じゃあ、もしかして…会社がブラックになる理由も…」


 ケイは

「そう、この原理と同じだ。最初は良かったかもしれない。だが…それは所詮、一時の事、だんだんと悪くなり、軍隊をモデルにしているが故に、社員の誰かを犠牲にして組織を維持する。会社というシステムで運営されている限り、例外は存在しない」


 カオリが

「でも、ホワイト企業だってあるじゃあないですか!」


 ケイは

「今は、ホワイトだろう。だが…売り上げが落ちて、傾いた瞬間、ブラックへ転落する。それは当たり前の事なんだよ」


 カオリが

「でも、会社が無くなると…働いて給料を貰う場所が…」


 ケイは

「じゃあ、カオリ君。君が世界の為に、社会の為に犠牲になって死ねって言われたら…どう思う?」


 カオリが

「断固拒否です」


 ケイは

「それでも、生け贄社会は、君を犠牲にする為にあらゆる手段を投じるだろう。それは恐ろしい事を平然とやる程ね。その歴史を私はたくさん知っている」


 カオリが

「そんな社会、イヤです!」


 ケイは肯き

「そう、だから社会は崩壊する。国が破滅するんだよ。日本だって嘗て第二次世界大戦後はそうだった。我々が絶対と思っているのは、所詮、紙一重で維持されている程の弱い存在なんだよ。それを人は学ばない。私の叔父さんは、就職氷河期世代だった。企業ではリストラが当たり前として、多くの人達が解雇されて大変な世の中になった。その後、リストラした企業は、復活する事無く、今の時代で生き残っているのは僅かだ。何とか生き残っている企業でさえも、風前の灯火なのが現状だ」


 カオリ

「つまり、企業は必ずブラック化するのは分かりました。何か解決方法があるんですか?」


 ケイが厳しい顔で

「ない」


 カオリが困惑して

「え…ないなら、このままずっと企業はブラック化して、やがて…世界はブラック企業となってしまうんですか…」


 ケイが

「カオリ君、言ったよね。生け贄が始まると社会が崩壊するって」


 カオリが

「どうすれば…」


 ケイが

「その答えを私が言ったとしても誰も聞かないだろう。事実、こうすれば良いとする考えを言った人達がいた。だが、その考えは言われた当時、全く理解されなかった。むしろ、狂っているとされた。だが…今ではそれが最良の解決策として、行われている」


 カオリ

「えええ…そんな事を言った人達って…」


 ケイが

「残念だけど、人間は知性で物事を見ていない。感情で物事を見ている。だから、それを理解する事が出来ない。だからこそ、確実に言える。この先、未来において企業、会社というシステムを崩壊させて、新たなシステムを創造しなければならない事態になるだろう。それのカウントダウンは始まっている。共同体だった組織は、会社という階級組織となり、未来は…。ここで私が言ったとしても誰も理解しないだろう」


 カオリ

「でも、それって何処かの一部だけがおかしくなって、日本には関係ないですよ」


 ケイ

「残念だけど、産業革命が始まった頃を考えると、世界的に同じ時期に変革は起こっている。世界はねぇ。見えない所で繋がっているんだよ。日本に異常があれば、世界の何処かでも異常が発生して、崩壊する。我々が世界というのを知った時から、この世界にある全ての人々は繋がっているんだよ。それを理解した方がいい」


 カオリ

「じゃあ! そうなった時にどうすれば良いんですか! やっぱりお金が…」


 ケイ

「残念だけど、私がこれから起こるであろう会社システムの崩壊の際に、資本とかお金とか全く無意味だね」


 カオリ

「やっぱり腕力が!」


 ケイが

「いや、それも確かに必要だけど…。カオリ君、今の世界は情報システムが凄まじく発達している。世界中のどこにでも、情報を得られるネットワークがあるんだよ。つまり…何時でも知識を蓄えるチャンスはあるんだよ。これを書いている作者は、そのネットワークを駆使して、色んな情報に触れたり、参考になる書籍を買ったり、知識を蓄え、それを小説にしたりしているんだよ。昔、知識とは限られた階級でしか得られなかったが…今、誰の上にもある。これはチャンスなんだよ」


 カオリが挙手して

「分かりました。ネットを駆使して勉強してお金持ちになります」


 ケイが微妙な顔で

「まあ、どんな動機にせよ。知識を得ようとするなら…いいか。とにかく、これから起こる大変な事があっても、知識を得ていれば、役に立つ事はあるんだよ」


 カオリが笑顔で

「じゃあ、国の偉い人達とか、凄く偉そうにしている人達も勉強しているんですね」


 ケイは遠くを見るように

「残念だけど、政治家って頭が良い人がやる仕事じゃあないんだよね…歴史を見ても」


 カオリは遠くを見て

「つまり、バカがやる仕事って事ですか?」


 ケイは遠くを見て

「政治家だけじゃあなくて、人の上に立ちたいって願望がある人達全員が、知性が低い事が分かったんだよね」


 カオリは遠くを見て

「バカほど、高い場所が好きですからねぇ…」


 カオリから

”会社って何?と思った方は社会学へ”

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る