第6話 お金って何 スリー
お金って何? スリー
ケイが真剣な眼差しで
「これが第二次世界大戦中の事だ。黄金列車という話を聞いた事があるかい?」
カオリが目を輝かせ
「黄金で出来た列車ですか!」
ケイは
「そんな成金列車じゃあない! 第二次世界大戦中にハンガリーで、実際あった事件でね。その当時、ハンガリーはドイツのナチスに従ってハンガリーのユダヤ人から財産を預かるとして没収したんだ。多くの金品や宝石が列車に集められ、当時のハンガリー政府は、その財宝列車をポーランドへ向けた」
カオリが
「教授、ポーランドへ行って見つけましょう! 黄金列車を!」
ケイは頭を抱え
「話を聞いてくれ。その黄金列車は、移動中に保管していた財宝が大量に盗まれた」
カオリが
「ヒドい!泥棒!」
ケイが真剣な顔で
「でも、それが戦争だったんだよ。戦争になれば経済や社会、その他諸々が崩壊する。ヨーロッパは世界大戦でボロボロだった。そんな時に身を守るとしたら…どうするかね?」
カオリ
「腕力を鍛えます」
ケイが呆れつつ
「そう、まあ、それは置いといて…。戦争になり国家は崩壊、そうなると紙幣ではなく貴重な金品を持っていれば、それを殺そうとする相手に渡して助かるかもしれない。実際、第二次世界大戦中に多くの略奪行為や、ヒドい犯罪行為があった事は報告されている」
カオリがガッツポーズで
「戦争、絶対ダメですね」
ケイは微妙な顔で
「そんな事は分かっている。誰だって戦争は悲劇しか生まない。だけど…戦争は起こってしまう。戦争は偏見や差別では起こらない。戦争は国家で社会で暮らしている人達が困窮する事で起こる。残念だが、戦争が勃発した事により、資本を持っている人達に集まっていた資本が、国民に配られて再び国が活性化した事例は多くある。そうやって資本を強引に集めて配らないと、人々は苦しいままだった」
カオリは暗い顔で
「じゃあ、永遠に戦争を繰り返すしかないんですか?」
ケイは肯き
「今のままのシステムではね」
カオリが
「お金が悪いんですか? それとも資本を沢山持っている人が悪いんですか?」
ケイは苦しい顔で
「両方とも悪くない。でも、両方とも悪いとも言える。じゃあ、全ての人々に平等に配ったとしても、それを上手く扱える人と、扱えない人が発生して、結局は元に戻る。それが社会なんだよ」
カオリが困った顔で
「じゃあ、どうすれば良いんでしょうか…」
ケイが真剣な目で
「トマピケティの21世紀の資本論では、世界的に金持ちに税金を掛けるという話がある。それによって資本を回収して、行政サービス…社会福祉を充実させる事が一つの解決策としてある。他にも個人としては、株や投資といったお金が集まるシステムにアクセスして、少ないお金、資本を上手く活用してお金を得るともある。だが…私としては、どちらも上手く行くとは思えない」
カオリが
「じゃあ、教授はどう…すれば良いと…」
ケイは厳しい顔で
「我々人間は、まだまだ、未熟な存在であると…自覚するべきだと思う。政治では経済さえ良くなれば、上手く行くと…。確かにネットや色んな論調には経済を活性化する事こそ、最善の道だと…あるも、私はそれではダメだと思う。最初に話した通り、一つの理論で全てが解決する事はない。色んな考えや理論があって、それが共存する事で選択肢が広がって世の中が良くなると思っている」
カオリが悲しげに
「バカとハサミは使いようですか…」
ケイが顔を引き攣らせて
「ちょっと、言い方は辛辣だけど、まあ…そういう事だね。お金はあくまでもツール、道具だ。様々な物とサービスの変換を行える便利な道具だ。だが、それに惑わされて間違った道を歩んでしまうのは、人間なんだよ。お金に罪はない。罪があるとすれば、間違った使い方をする人間に問題がある。間違った使い方を示して防ぐのも学問の力の一つだと…私は思うね」
カオリが
「じゃあ、友達の友達の彼氏の友達が言っていた。お金がないヤツは彼女は出来ないって言うのは…」
ケイが微笑み
「お金以外に、自分がどういう能力を持っているか? 色々と挑戦してみるのもありかもしれないね。お金はあくまで、道具であって、道具があるから幸せになるのは本人次第だからね」
カオリが
「じゃあ、お金が沢山ある賄賂漬けの政治家だって、お金を上手く使えば、正しいんですね」
ケイは遠くを見るような目で
「いや、政治家が賄賂漬けってダメでしょう。社会の根幹を決めるのに、一部の人間が得するような法律を作ったら、それこそ…世の中が、社会が崩壊しますよ」
カオリも遠くを見て
「でも、政治家って、そういう人が多いじゃないですか…」
ケイは遠くを見て
「社会学でも心理学でも他の学問でも、どうしても…支配者って、私腹を肥やすようになってしまうからねぇ…」
カオリも遠くを見て
「そういう例外って見た事ないですよね…」
カオリより
”お金って何?と思った方は社会学で”
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