第5話 お金って何 ツー


 お金って何? ツー


 ケイが千円札を見せながら

「カオリ君、インフレとかデフレとか…聞いた事があるよね」


 カオリは明るい顔で

「あああ! これを書いている作者の、デタラメに規模が大きくなっている、アホみたいな小説ですよね。ドラゴンボールのインフレ状態みたいとか!」

 

 ケイが

「作者をディスるのは止めてくれ! 仕方ないんだよ。それが作者の個性なんだから」


 カオリが

「なんでもインフレみたいなバトルとか、規模にすれば、受けると思っているんでしょう!」


 ケイが呆れ気味に

「もういい、私が説明する。インフレ、インフレーションとは、物価に対して紙幣の価値、お金の価値が下がる事なんだよ。デフレ、デフレーションとは、物価に対してお金の価値が上って事なんだよ」


 カオリが指で計算しながら

「って事は…インフレだといっぱいお金がないと…物が買えない…最悪。デフレだと、少ないお金でいっぱい物が買える。最高!」


 ケイ

「そういうお金の話は、君は強いね」

 

 カオリが指差し

「お金持ちを目指していますから!」


 ケイ

「とにかく、どちらも、おちいってはいけない、お金の動きだね」


 カオリが挙手して

「はいはい。前にテレビで見ましたけど、みんな物を買いすぎて要らなくなるから不況になるから、物の値段を下げて売ると給料が下がるから、不況になるって見た事があります」


 ケイは肯き

「確かに、そういう話もあるね」


 カオリは胸を張り

「カオリは凄いでしょう」

 

 ケイは鋭い顔をして

「残念だけど…不況になる理由ってそういう事じゃあないんだよ」


 カオリが驚きを向け

「テレビはウソを言っているんですか!」


 ケイは

「テレビは、番組の都合上、どうしても詳しくは調べられない。だからこそ、人が納得しそうな話を創作する事が多々ある。テレビの解説を参考にするのは止めた方が良いかもね」


 カオリが

「じゃあ、どうして不況になるんですか! 教授」


 ケイは

「カオル君は、トマピケティという人物を知っているかね?」


 カオルが真剣に

「トマトがピッケルを持って歩いている」


 ケイが

「訳の分からない妖精じゃあないから!」


 カオリが笑顔で

「知ってますよ! 21世紀の資本論を書いた人でしょう。テレビにも出ました」


 ケイが真剣な顔で

「その21世紀の資本論には、膨大なデータから…お金とはどんな風に流れて行くか…を解説しているんだよ。その書籍には、お金は回収される…とね」


 カオリが驚きの顔で

「バキュームカーで吸われているんですか!」


 ケイが

「いや、そんな、ハッキリとした感じで吸われていたらビックリだよ! まあ、とにかく、つまり、簡単な話…物には色んなお金が掛かっている。材料費、税金、人件費、その他の費用によって物の値段が決まっている。とても、簡単な図式として…

 カオリ君が物を買う→そのお金が制作者に行く→制作者のお金から材料費、人件費、税金、その他を払う→その人件費や材料費が、元…原資を造った人達へ行く→その人達がカオリ君が造った何かを買う→それがカオリ君の給料になって、またカオリ君が物を買う。

 それの繰り返しによってお金は動いているんだよ」


 カオリが首を傾げ

「あれ? それを聞くと…お金ってけっこう動いていますよ。不況になってお金の流れは滞るって言われますけど…」


 ケイは真剣な目で

「残念ながら、それはウソだ。今の現代では、お金は絶えず動いている。お金の流れが滞る事はあり得ない。不可能なんだよ」


 カオリが首を傾げ

「じゃあ、どうして…不況とかになって、給料が減ったりして、お金が減るんですか?」


 ケイは真剣な目で

「お金が世の中に大量に出回ると、それを回収しようとする力が強まるんだよ。これが21世紀の資本論にある。お金を放出するよりも回収する力が強いという方程式が顕わになった。不況になる理由は…お金の元となる資本を多く持っている者達が、世の中に出回っている大量のお金を回収しようとする事で起こる。過剰回収が原因なんだよ」


 カオリが

「ええええええ! どうして、そんな事をするんですか!」


 ケイが

「これは、自分の富を守ろうとする自己防衛なんだよ」


 カオリが前のめりに

「じゃあ、自分さえ避ければ、他人なんてどうでも良いんですか!」


 ケイがカオリを落ち着けながら

「聞いてくれカオリ君。じゃあ、君が働いて得た土地や家があるとしよう。それを欲しいって人が来たら…どうするかね」


 カオリが考えながら

「そりゃあ…自分が買った値段より少し高く売りますよ」


 ケイが見詰めて

「本当に?」


 カオリが焦りながら

「まあ、二倍くらいには…」


 ケイが

「じゃあ、君の望み通りの値段で売ったとして、その後は…どうするかね?」


 カオリが笑顔で

「そりゃあ、もっと良い家と土地を買いますよ」


 ケイが

「その通りだよ。それがお金の回収力を高めているんだよ」


 カオリが驚き

「えええ…普通、そうですよ!」


 ケイが肯き

「その普通が、お金を回収する力を強めるんだ。お金が世の中に多くなると、もっと良い物が欲しくなる。それは人としての当然の作用だ。そうなると、もっと良い物を持っている人からそれを売って貰う。売った方はそれを元手にもっと良い物を買う。そうする事によって、ドンドンとお金は上へ上に昇り、多くの資本を持っている人達へ自然と集まる。そうして回収力が増して、ある日、放出するよりもお金を回収する力が強くなった瞬間に不況になるんだよ」


 カオリが

「じゃあ、いっぱい持っている人達が、いっぱい放出すれば良いじゃないですか! それなら、お金が世の中に広まって不況になんてならないですよ!」


 ケイが

「じゃあ、カオル君。君の財布にあるお金…誰かにあげても良いんだよね」


 カオリが財布のあるポケットを押さえ

「イヤですよ!」


 ケイが

「そういう事なんだよ。誰だって、ただでお金を渡すつもりはない。お金は色んな物やサービスと交換できる便利な道具だからね。人間の、知らない誰かに自分の資本を分け与えないによって、どうやっても世の中は不況になる」


 カオリが不安げに

「じゃあ、どうすれば…お金が世の中に出回るんですか?」


 ケイが微笑み

「簡単だよ。新しい物やサービスを造るしかない。そうすれば、それを欲して資本を持っている人達が、資本を提供して、お金が動き出す」


 カオリが

「でも、新しい物を造っても広まるかどうか…分かりませんよ」


 ケイは肯き

「確かに、その通りだ。だけどね…それだからと言って、現状維持のままでは、お金を回収する力は弱まる事は決して無い。それがヒドくなって、過去にドイツではナチスが誕生したり、世界の歴史を見ると、そのお金を回収する力が強すぎて不況になり、人々が追い詰められて戦争が勃発している。21世紀の資本論のデータでは、その回収力の極大値の後に戦争が起こっている」


 カオリが

「お金って怖いですね」


 ケイが真剣な眼差しで

「だが、お金が使えるって事は…世の中が平和で安定しているって事でもあるんだよ」


 カオリが

「じゃあ、お金の力がなくなったら…どうなるんですか?」


 ケイが

「その話として…とある事件を語ろう」


 続く

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