第4話 お金って何?

お金って何?


 社会学教授、窓際 ケイ、三十代男性。

 ケイの助手、見方 カオリ、二十代ぴちぴちの乙女。


 カオリ

「さすが、作者さん。前回の事で学習してくれましたね」

 笑顔?


 ケイ

「いや、作者にいらん負担を与えるなーーーー」


 カオリが

「ケイ教授、実は、友達の友達の彼氏の友達の一人が、お金がないヤツは彼女が出来ないって言っていましたけど…」


 ケイは顔を引き攣らせて

「友達の友達の彼氏の友達って、随分…色々と経由しているねぇ…」


 カオリは笑顔で

「女って秘密がある方がモテるんですよ!」


 ケイは額を抱え

「まあ、その辺りは後にして。カオリ君、どうしてお金ってあると思うかい?」


 カオリは上を見上げて

「なんとなくあるから!」


 ケイ

「いや、適当すぎだよカオリ君」

 

 カオリが頬を膨らませ

「じゃあ、教授は、なんでお金があるのかって分かるんですか?」


 ケイは肯き

「良い質問だ。社会学にとってお金は、最も扱われる命題だからね。だからこそお金が何なのか…その理由は決まっている。それは…」

 

 カオリ

「それは…」


 ケイ

「お金は、社会において、物品といった社会で生産される物の交換ツールなんだよ」


 カオリ

「え…ツールって、道具って事ですか? でも、おかしいじゃあないですか! お金を巡って殺人や強盗、レイプとか犯罪が起こるんですよ。道具以上じゃあないですか!」


 ケイ

「カオリ君、そもそも、お金の始まりってなんだと思うかい?」


 カオリ

「んん、お金…金、そうか! 鬼に金棒です!」


 ケイ

「どうして! そういう発想になる!」


 カオリ

「だって、お金は金、金と言ったら鬼です! 鬼といったら借金取りです! 借金取りが怖いから、お金って力があるんです!」


 ケイ

「どこから、どうツッコんで良いのか分からない位の理論すぎて、ツッコまないよ。まあ、とにかく、お金、マネー、その始まりは…金と交換できるから始まっています。つまり、お金とは、貴重な金や銀と交換出来る券、銀行券なのです」


 カオリが財布から千円を取り出し

「じゃあ、これは銀や金に変身するんですね」


 ケイ

「いや、出来ないよ。まあ、今の時代じゃあ、銀行券だから銀行に行っても金や銀に交換してくれないけどね」


 カオリ

「それ、詐欺じゃないですか!」 


 ケイは肯き

「確かにそうだろうね。でも、カオリ君がそれに気付いても、他の人達は、交換できると思っているか、とにかく、物品やサービスと引き替える事が出来るから…お金を使い続けるだろうね」


 カオリが青ざめ

「じゃあ、皆、詐欺に騙され続けているじゃあないですかーーーーー」


 ケイが冷静に

「でも…それがお金の本質なんだよ。皆が使えると思っているから…使えるんだよ」


 カオリ

「そんなーーー マボロシーーーーーー」


 ケイ

「いや、そのネタ…良く知っているね」


 カオリが舌を出して笑み

「お姉ちゃんが、使っていましたから」


 ケイは調子を整え

「とにかく、お金とは、皆が使えると思っているから使えるのが本質なんだよ」


 カオリは首を傾げて

「じゃあ、どうして、お金を使って世の中が回っているんですか? マボロシが本質なら、世の中が回らない筈ですけど…」


 ケイは千円札を取り出し

「カオリ君。この千円札を見て、買える物を思い浮かべてくれ」


 カオリは千円札を見詰めて

「んん…ステーキ一番だと…安めでもステーキの一品とか、あと…コンビニで駄菓子を山ほど…コンビニのスィーツがてんこ盛り…」


 ケイは顔を引き攣らせて

「食い意地が張っているけど、まあ、その通り…千円札で色んな物が買う事が出来る。それがお金に力がある原動力になっているんだよ」


 カオリ

「え…買える物を思い浮かべただけで…」


 ケイは肯き

「そうだよ。千円札によって思い浮かべる事があるから、お金は使えるんだよ。つまり…我々は、お金が物と交換できる幻によって、お金に力があると判断しているんだよ」


 カオリが

「でも、それじゃあ、その幻が崩壊したら、お金って意味ないじゃあないですか!」


 ケイは肯き

「その通り、現実にその幻が崩壊して大変な事になった事例は、近年もあった」


 カオリが驚きの顔で

「それって…どういう事です?」


 

 続く


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