光学迷彩

 なんだ、なんだ?何が起きた?


 続けざまに撃ち続ける。弾が当たる度、空飛ぶ男が歪み、スカスカとすり抜ける。


「フォフォフォ…ローランよ。そのような豆鉄砲で我を倒そうとは片腹痛い。おや…聞こえぬか?遠くから聞こえるあの羽音が。なぁ?ローラン?」


 音のする方向を見やると、魔物の群れがこちらに向かってきた。最悪の状況だ…空飛ぶ男の応援がやって来る……


 だが、この程度で諦めるほど僕の心は弱くない。それに分かったこともある。


 空飛ぶ男は光を曲げて周りの風景に擬態しているようだ。弾が当たる瞬間、空飛ぶ男が歪んで元の風景が一瞬見えた。


 これは光学迷彩という技術だろう。しかし、なんということだ。人類の叡智が魔物に利用されてしまっている。


 だが、嘆いている暇はない。空飛ぶ男はここ一帯のどこかに潜んでいるに違いない。


 下手な鉄砲、数打ちゃ当たる。空に浮かんでいる空飛ぶ男の“幻影”の周囲を僕は打ち続けた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る