真摯な態度

 傷男の話に生返事をしながら道中で買ったカツレツのハンバーガーを食べる。実はこれはトンカツでなく、マグロカツなのだ。中々に美味しい。


「くっくっく…食欲で怖さを紛らわす、か…。魔物と出会って吐かないように気をつけろよ」


 傷男が僕に忠告してくれる。その忠告を僕は指についたソースを舐めながら聞き、そして考える。


 このバスにいる連中は銃で武装した上にこんな装甲車で移動している。


 もしかすると、僕が今まで戦った魔物は弱っちい奴らばかりだったのではないか。これから先は最新兵器で武装しないと敵わない強敵ばかりなのかもしれない。


 僕は自分の驕りを恥じた。四天王を二人倒したからといって調子に乗っていた。


 ゲームでも序盤のボスより後半のザコの方が遥かに強い場合もある。胡散臭いこの日本では、ありうべき事態かもしれない。


 真摯になろう。傷男の言葉に耳を傾けよう。


“ピロリン”


 また通知か。と思ってスマートフォンを取り出したが何も通知されてない。ふと見ると、横の傷男のスマートフォンだ。僕とは違うニュースアプリを使っていた。僕は横から覗き込む。


 ──“速報“ 英雄ローラン、また四天王の一人を倒す。今度は死霊術師ネクロマンサーのネビュロス──


「英雄ローランか……あいつは日本の希望だな。俺たちが束になっても敵わねぇ。そう思うだろ?新入り?」


 僕は考えを改めた。聞くことは何もない。

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