新入り

 狭い室内で肩を並べて男たちと席を同じくする。男たちはそれなりに鍛えているようだ。僕も負けてられない。


 エンジンの音がし、バスが走り出した。見た目からサスペンションとか悪そうだな、と思っていたが、意外と振動がない。


 わずかに感じる振動に揺れながら、しばらくして、アナウンスが流れる。


 「地獄へようこそ、クソ野郎ども…

 このバスは──新都──ニューポスト発、──サイレントヒル──パインベイシティ行き……地獄の送迎高速バス──ケルベロス──…

 次はファイアポートだ。そこで死にたい奴は勝手に降りて死ね…」


 こんなアナウンスがあるかよ。


 僕が呆気に取られていると横にいた顔に傷のある男が苦笑して話しかけてきた。


「くっくっく…怖いか、新入り。まあ、分からんでもない。俺も最初はそうだった」


 バスに乗っただけなのに新入り扱い。


 公共交通機関使うとそんな扱いを受けるとは思いもよらなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る