禁句が呼んだ悪魔
フッ
全身何処も彼処も倦怠感に満ちている。全身の何処を動かそうと思っても普段の様に動かない。
血管の中を水銀が流れているのかと思える程に重い。全身が痺れ、瞼が重い。
疲労のあまり呼吸をする事に苦痛を感じるようになっている有様。指先一本を動かす事さえも非常に億劫だ。
だからこそ、言葉にする。
「
君達と同じ境遇に居る筈の人間が貴族ばかりの学園に行く事の意味を考えた事が少しでもあったか?まさか歓迎されて祝福されて拍手喝采で踏み入れたと思っているのか?そんな甘い話は無い。」
空気が変わった。今や茶番劇となってしまった立ち回り。それを無賃で見ていた行儀の悪い観客達の表情が全て同じ色に染まる。
「ここまで来る為にどれだけの代償を支払ったと思う?
相手は英才教育、資金、コネクションと揃っている連中。対するこちらは何も持たない人間だ。
ただでさえスタートが違う上に嵐の様な逆風が襲い掛かる。そんな中で、それでも生き残る為に、負けじと歯を食い縛ってどれだけの事をやってきたと思っている?
少しでもミスがあれば即刻死に直結する極限環境が毎日毎日、毎日!そんな毎日を孤立無援で続けて生き続けてきた事を、『
村の命運が左右されるといったな?外部からやって来た世間知らずの無力な小娘に数日足らずで如何こうされる程度の命運なぞ疾っくの疾う尽きているのと変わりはない。
ここまで何もせず、卑屈に、死体の様に生きてきた分際で被害者面をするなよ。」
紳士淑女の冷静で優雅な言葉を前に、逆上していた禿頭の男が
顔色は真っ青。恐怖を通り越して死を目の前にしたあの表情が浮かんでいる。
「君達がこのまま廃れてしまえば私も共倒れ。ここで私がする事を止めれば君達も死を待つだけ。そして、このまま君達がやろうとしている事をそのまま行えば、遅かれ早かれ
そう言いながら診療所の中で大人しくしている毒爺に目線を送る。
一度無理矢理抑圧し、それでも抑圧を撥ね退けて弾けた狂気。それがまたも抑圧されて墓場まで持っていけるか?そんな訳がない。起きた途端に第二幕の開演だ。
「………………………………………」
表情が微動だにせず、呼吸まで忘れ始めた。さて、もうそろそろシェリー=モリアーティーとして振舞おうか。
「私を呼んだのは
貴方達にこの状況を逆転させるだけの力や策があるのなら、私は喜んでそれに協力しましょう。
ですが、もし代案が無いのなら、諦めて私の成す事に協力するしか道はありません。宜しいですね?」
傷一つ無いが瀕死。オーイに肩を貸してもらってやっとの事で立っているだけの少女。それがシェリー=モリアーティーだ。
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