スバテラ村 回想その1
「アイツの…アイツのせいだぁあああああああああ!」
シェリー=モリアーティー消失の後、純粋に治療出来る人間の頭数が減ったせいで修羅場が加速してしまった診療所にそんな叫びが轟いた。
「あぁの!クソ女がぁ!この村をぉ!終末へと導こうとしているぅぅぅぅぅぅぅううううう!」
重症者は未だゼロではない。軽症の人間に関してはまだまだ沢山居る。そんな中で悲鳴でも無い、すすり泣く声でもない、怪鳥の咆哮の様なそんな声は異常に目立った、そして耳立った。
皆凶器を握ったまま、一人は腕に力が入っていないが、それでも目が爛々と輝き、息は荒く、極度の興奮状態である。
「ちょ、ちょっとアンタ達、モリーはどうしたの⁉」
オーイは血の気が更に引いた。今の今まで祖父の命の安否に心を痛めていたし、現在も気が気ではない。それに加えて、更なる憂い、
「本当に済まない!僕達が懲らしめようと尽力したのだが、逃げられてしまった!」
オーイの直ぐ目の前にやってきたというのに、『心を痛めている』という
「だが、これで解った筈だ。やましい気持ちが無ければ人は逃げない。
今回の逃走で証明された。
『あのシェリー=モリアーティーという女はこの村に危害を加える邪悪である』と!」
『心を痛めている』という
目の前で見せられていたオーイは知っている。この幼馴染達は大して頭が良くない。おまけに子どもっぽい。
もしシェリー=モリアーティーが彼らに危害を加えられていたら、確実に
少なくとも、『自分達の恩人は無事である。』という確証を得た。そして逃げたというのも本当だろう。
しかし、目の前の喧しい大きな子どもが無事でここに居る以上、直ぐには戻っては来られない事を意味しているのも解った。
『ドクジーさんと
それはこの状況を予期しての事だとオーイは確信した。
「手が空いている者は一緒に来てくれ。皆であの外道を倒すんだ!
僕達の村は僕達で守ろう!」
オーイの目の前に居ながら、相手はオーイを無視していた。
しかも、なんの関係もない村の人間を助ける為に、自分を陥れようとした人間を助ける為に、力を振り絞った人間を陥れようと今、動いている。
許される事ではないと、オーイは思った。
自分達もシェリー=モリアーティーに対して許されざる行為を行った。しかし、同じだからといって放っておく道理はない。否、同じだからこそ止めなければならないと思った。
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