思い、考え、魔女狩り
「感動的な話に水を差す。」
自称そこそこ天才が挙手をして『感動的なお話』にワザとらしく割り込んできた。
「村の人間に大事が無かったこと、不幸中の幸いだ皆命は無事で良かったそれが何よりそれが一番大事命は何よりも高価な財産だ。
で、村の様子は?それが問題だ。」
それを聞いて勿論、この中で唯一あの村出身の孫娘は顔を露骨に歪めた。何せ、あまりにも話に興味が無いというアピールをして話を中断したからな。
「えっと、ジーニアスさん。だから今、村の話をしたよね?
皆無事、モリーが頑張って、ドクジーが頑張って、私も少しだけ頑張って、だから大丈夫だよって話だよ?」
これに対してシェリー君は沈黙した。いつもなら孫娘側の意見を述べそうなものだが、今回は違う。それは自称そこそこ天才の質問の意図、考えて見据えている事が見えているからだ。
だからこそ、孫娘の
孫娘の不快剥き出しの表情を見た上で涼しい顔をしながら自称そこそこ天才は孫娘に言葉を突き付けた。
「具体的な質問に変えてみよう。『昨日の事件について村の連中は
生きていて良かった、皆助かったのは君のお陰、有り難う。
それは確かにシェリー嬢の精神面で重要だ。だが、現状は違うのだろう?
昨日聞いた話だと、治療中の彼女に対して大の男が武器を持って襲ったそうじゃないか。
実際、私は映像で途中から見ていたから知っている。あれは拙いが殺そうという意志はあったぞ。」
「そ…れは……」
孫娘が俯いて口を閉ざしてしまった。
重要なのはそこだ。
あの村は今、中毒事件の犯人という厄介事を抱え、同時に森の怪物という厄介事も抱えている。
ただでさえ人的、物質的リソースが足りないあの村で
それに、忘れそうになるが、今シェリー君はここに学園の課題でやって来ている。連中が敵対したままではこれからのシェリー君の行く先にも大きく影を落とす。
現状、シェリー君の誤解を解く事はあの村の滅びとシェリー君のこれからに大きく関わっている。大袈裟な様だが残念ながら事実だ。
そして、孫娘が今、視線をテーブルの下に落とし、沈黙し、指先でカップの淵をなぞっている。
質問の答えは語られていた。
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