悪い事は団体でやって来る12


 そんなこんなで真夜中、人の気配が薄れている村を透明なままで移動し続ける。

 村の大半が診療所の近辺、後の半分は家で安静にしている最中。透明故に起こる不慮の事故と発見リスクが減っているのは都合が良い。

 という訳で、仮家には邪魔も入らず呆気無く到着した。

 扉を確認したところ、今のところ誰も入った様子が無い。

 「ナニガアッタンダ?」

 聞かれる相手が居ない事を互いに確認しつつ家の中にあるものをまとめる。

 「中毒事件が起きました。」

 「…ソレハキノウノコトダロウ?」

 「いいえ、今日も起きました。しかも、昨日は単一の毒物でしかも軽症の人間が多かったのですが、今日は複数の毒物で、しかも重症の人間が多数。昨日とは悪意が違いました。」

 「……キノウノコムスメガマタ?」

 「彼女の祖父、つまり主犯が重症で運び込まれ、先程まで私が対処していました。

 あのまま放置していたら死んでいましたよ。」

 「アー……エット……ヒジョウニレイヲカクハツゲンヲシツレイスル。

 モチロンワカッテイルノダガ、キミガヤッタワケデハナク、キミハマキコマレタガワデヨロシイ?」

 礼を欠いている発言だ。何時もならばある程度報いを受けさせるが、これに関しては私はスルーする。今回だけはスルーする。

 「そもそも今日はオーイさんとジーニアスさんとずっと一緒でしたよ?私ではありません。

 ただ……そうですね、もしかしたら…私がこれらの件の遠因になった可能性は、ありますがね………」

 空気が少しだけ冷たくなる。

 遠因。確かに変化は変化を生む。酸化と還元、あるいは恋愛と憎悪が良い例だろう。

 だが、今回のこの件はそれらとは違う。元々抱えていた爆弾を痩せ我慢で抱え込んでいただけ。

 遅かれ早かれそれは今回の様に破裂していた。あるいはもっと最悪の形で破裂して被害が拡大していたかもしれない。

 今日の悪意に関して強いて出来たとしたら、それは犯人を完膚なきまでに未然に叩き潰す事だけだ。

 「アァ、ウン、ソウダッタ……ゴメンナサイ。ホントウニゴメンナサイ。」

 「いえ、では、お言葉に甘えさせて頂きます。

 それと、厚かましいお願いだというのは承知していますが、本件解決の協力をお願いしても宜しいですか?」

 「アァ、ウン、ムラノコンラン、モリノケン、リョウシャニカンレンガアルトコマルカラ、モチロンダ………。」

 蝙蝠は荷物を運ぶシェリー君の頭上を飛び、無言になった。

 対するシェリー君も無言になる。が、その表情は語っていた。

 その正体が自分への怒りか、他人への怒りか、それは敢えて言及しないこととしよう。


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