悪い事は団体でやって来る11

 「サテ、ココカラ『ジドウソウジュウモード』ニキリカエル。

 タイショウトシタモノノウゴキヲカンチシテソノコウモリモウゴク。」

 ある程度若者連中が辺りを探し終え、見つける事が出来ずに諦めて診療所へと撤退していった頃になって、蝙蝠が話し始めた。

 「コノムラニオイテアルニモツヲカイシュウシニムカウトイイ。

 イマナラバレズニカイシュウデキルダロウ。ワルサヲサレルマエニフアンヨウソハツンデクンダ。

 ソレガオワリシダイキミノピックアップニムカウ。

 セマクテワルイガ、ワタシノイエヲネドコニツカウトイイ。」

 「いえ!そういう訳には……」

 周囲に人の気配が無くなり、少しだけ声を響かせてしまった。

 幸い周囲にそれを聞く者は居ない。

 「アキラメルンダ。ココデキミヲホウッテオイタラコチラノネザメモワルイ。

 ワタシノタメダトオモッテカンネンスルトイイ。」

 「シェリー君、私も同意見だ。」

 「教授から教わったサバイバル技術を以てすれば自給自足程度は容易いです。それは教授が最もご存じの筈です。」

 「あぁ、存じ上げているとも。だからこそ言っている。諦めるんだ。そもそもそんな事許可出来ないし、私は全力で止める。

 『能力がある・出来るのであれば必ずやらねばならない』という道理も理論も無い。

 たとえ世界を救えるだけの力があって、実際に世界を救えるとしても、世界を救う必要はない。滅ぶ様を葡萄酒片手に傍観していてもよい位だ。」

 「そんな……!」

 「逆に!世界を滅ぼせる力があって、実際に指先一つで世界を滅ぼせたとしても、世界を滅ぼす動議も義務も責任も無い。

 出来るとやらねばならないを履き違えてはならない。

 それに、今やるべき事は『シェリー=モリアーティー嬢のサバイバルキャンプ』ではない。

 ここで荷物を置いて去ったらこの二日分の事件をまとめて君の犯行にする仕込みを許す事になる。犯人や連中・・の邪魔を許す事になる。この下らない茶番の再発を許す事にもなる。

 ここで悠長にキャンプをやりながら廃村崩れを救える程君は有能かね?万能かね?全能かね?」

 「それは……」

 畳み掛けた結果、言葉に詰まる。

 「人の厚意を疑う事は構わない。人の悪意に食われるよりはマシだ。

 不要な人の厚意を断る事も構わない。余計な厚意が邪魔をするよりはマシだ。

 だが、自分にとって必要な人の厚意ならば受け取っておく事も必要だ。もし、引け目を感じるなら後で返せばいい。

 君には人の厚意に報いる位の能力はある筈だ。」

 「……ジーニアスさん、では、宜しくお願いします」

 「オヤ、スナオデヨカッタ。

 エンリョサレタラ、ソノトキハモンドウムヨウデムラニノリコムトコロダッタゾ。」

 村が地獄絵図の一歩手前まで来ていた。

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