時間一杯人集め
森から帰る途中、三人の子ども達から話を聞いていた。
人の記憶は当てになる様に見えてその実信頼出来ないものの筆頭だ。
それは精度の問題や情報量の問題、単に忘れるというのもそうだが、偏見や先入観、人からの刷り込みで変わっていく所も理由だ。
外部から手を加えられるという点は証言において非常に便利だ。無論、『悪意に満ちた意味で』だがね。
暴漢に襲われた女性を颯爽と助けに来た若人を『自分を襲った暴漢だ』と後々刷り込む事で社会から好青年一人を葬り去り、邪悪な暴漢一人を野放しにさせ、沢山の法の番人の時間を無駄な捜査に費やすように仕向け、普段ならば法の番人の居る筈の区域から番人の目を消し去り、暴漢に
ついでに好青年の精神を追い詰め、悪へと陥れて私の駒にする事さえも可能となる。
つまり、時間が経てば経つ程証言者の目撃証言には邪悪が宿るという事だ。
そして、時間が経てば経つ程証言に潜む悪意を見つけ出し、証明する事が困難となっていく。
子どもは素直だ。だから大人の思惑の通りに動くし、悪意の刃を無邪気に振るって刺す。
しかし、子どもは大人に成るにつれて子どもの頃に行った事柄、行わされた事柄の意味を知る。
今回の事を数年後、彼らは後悔するか、はたまた学び、悪意を芽吹かせるか……。
私としては当然悪意を芽吹かせて邪悪の花を咲かせる方が好みだが、シェリー君は当然それを許さない。
だからこそ、良からぬ若者達が子ども達の記憶を捏造する前に確認を取っていた。
目の前で起こっている光景は森の中で既に予測していた。
それでも、だ。
「あまりにも非道いです……。」
悲惨なまでに浅慮な若者軍団の行動に呆れ返り、そして恐れていた。
予めシェリー君はこうなる事を考えていた。が、森の中で一つだけ分からない事があった。
それはシェリー君が万が一子ども達を保護出来なかった場合についてだ。
正義の味方の断罪茶番劇の切っ掛けから舞台作りまで一連の動きを見た。
自分達は森に入らない。人を唆して動かして事件を発生。そしてその事件の首謀者をシェリー君に押し付けて自分達が正義の味方の断罪者になる。
わざわざ子ども達をシェリー君達から遠ざけて 余計な発言を防ぐ辺り、雑だが
で、『森へ誘導』・『断罪』の要素はあるが『救出』の準備は何処にある?
シェリー君が森へ突っ込まなかった場合は子ども達を唆した犯人としてシェリー君を叩く。
森へ入って子ども達と戻ってきた場合は現状の様に断罪裁判ショー。
もし、子ども達が戻ってこなかった場合、どうする気だった?
森の中の
知らなくても、森の怪物がデマだと思っていたとしても、前日の件があって行かせる事は羅針盤を持たずに未知の海へ航海するのと同義。
どうやって子ども達を無事保護するつもりだった?答えは簡単。無策だよ。
若者軍団は森へ入る装備ではなかった。そして目立った汚れが靴にも服にもなかった。
時間があれだけあって保護に駆け付けていない訳だ。
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