急募:汎用性の高い風呂敷の名前
「足跡がきれいに残っていますね……。」
僅かな光源で照らされた地面を屈んで観察する。
今まで見かけた足跡は3つ。順調に追跡出来ている。
「奇妙ですね……」
順調に追跡が出来ている。だからこそシェリー君は不安を感じている。
「何が奇妙かね?」
「……少なくとも足跡を見つけて追跡する間、足跡がきれいに3つ、真っ直ぐ残っているのです。
子どもが遊び慣れしている場所に遊びに行ったとして、一直線にここまで進むものでしょうか?
時々足を止めたり、走り回って曲線を描いたり、自分の足跡を踏み荒らして追跡に
少なくとも私との
一体……誰かに強要されて動いている?それとも何かの目的があってここに来た?何か意図があったとして、一体……」
風呂敷を展開して周囲を警戒しながら足跡を追いかけていく。
小枝の山が幾つもある場所を過ぎると下り坂となり、またしても木、木、木………。となったのでまたも木の上で子ども達を追跡する。
枝が折れ、土があちこちに付着しているから追跡が順調に進んでいる。
「……霧が濃くなってきましたね。」
足元では濃霧が再度充満してきた。
相も変わらず気配は無し。しかし、無音ではなかった。
「………池があるというのはこの辺りでしたね。水に落ちたという事は……相変わらず痕跡は3人分。落ちた痕跡も無し。
大丈夫そうですね。どうやら水の中には何かが居るようです。」
水音と
木から木へと移動して、霧が再度薄くなっていくと、薄い霧の先に大樹が見えてきた。
左右対称に近い形状で他の木々と比べて太く大きい。そして、大きさ故に大樹から根が周囲に広がって他の木が生える事を許さない。
お陰でユグドラシルの周囲には木が生えずに広場の様になっている。
「あれがユグドラシル。本来遊び目的で来ているのであれば、ここに居るのでしょうが……ね。」
不自然な現状でここに居るとは考えていない。が、足跡は大樹へと続いている。
「警戒しつつ、突入するしかないですね。
このまま順調に見つけてお仕舞に出来れば良いのですが……」
木を降りて風呂敷の展開をしながらユグドラシルへと近付いていく。
周辺が広場になっている関係で周囲からこちらの動きが手に取る様に見える。
最悪狙撃された場合、視界側からの攻撃に限りマニュアル操作で着弾部分を魔法で強化して貫通防止+狙撃のエネルギー量次第では衝撃を防ぎきる事まで可能だ。無論、マニュアル発動が間に合う場合に限り……だがね。
術式をある程度改良して衝撃が加わった場所に自動防御が瞬間的に発動する様にすればいいのだが、これは後々の課題としよう。
動いた時に発生した風に靡いて風呂敷が揺れる。
そして、布が不自然にたわんだ。
この防御の利点がもう一つあった。
例えば相手が視覚的に見えない場合、柔軟性が無い壁と違ってこの風呂敷は物理的な接触を布の形状の変化で教えてくれる。
例えばシェリー君の目の前に見えない木の幹サイズの
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