鑑定人シェリー=モリアーティー
「さて、それでは皆さん食べ終えたところで、作戦会議を始めましょう。」
食べ終えて片付けた後で音頭を取ったシェリー君。
反応した3人が自分達の持ち寄ったあれこれを広げて露天商を始めた。
「これ!家の近くで拾った魔法の石!」
「森の中で拾ったんだけど魔法の剣かな?杖かな?どっちかな?」
「代々つたわる封印された伝説の武器です。これなら怪物退治もへっちゃらです。」
出して見せたのは
・表面が酸化鉄で覆われた歪な塊。土で汚れている。
・へし折れた太めの木の枝。子どもの尺度だと曲がっていないので辛うじて杖や剣に見えなくもない。
・ボロボロになった鞘付きの短剣。よく見ると接着剤が鞘部分からはみ出ている。そして自分の腕の半分程の長さの短剣を子どもが軽々振っている。つまりは刀身がそもそも無い。
「へーぇ、これで怪物退治するのか……」
孫娘が引きつった顔様な困った様な苦笑いをしている。
逆にシェリー君は真剣に出されたものを観察している。
「成程。魔法の石、魔法の剣か杖、封印された武器。ですか。
成程……」
魔法の石を渡されて興味深く眺めていたと思えば懐から取り出したルーペを目の前に固定。魔法の石を手にして角度を変えながら近付けたり離したり、観察し始める。
「えっ、本気も本気の観察道具じゃん。
マジかよ……子どものもの、そんな本気装備で鑑定するの?」
若干ギョッとしながらその様を感心して見ている。
「どう!どう!お宝!すごいでしょ!」
今までに見た事が無い謎の道具(ルーペ)を持ち出して調べだしたのを見て、子ども達は興奮に呑み込まれた。
「これは?これも魔法の杖?剣?そのクルってやつで見て?」
枝も差し出される。
「これもです。でんかのほーとうです。見てです見てです。」
短剣の鞘を持って柄を枝と石の間に差し込む。
枝を見て一瞬だけ目を止め、子ども達に向き合う。
「鑑定には少しだけ時間が掛かります。少しだけ待って下さい。順番に調べます。」
にっこり笑ったのを見て子ども達が文字通り飛び上がって整列した。
「……アールブルー学園って、子守とか鑑定とかまで教えて貰うのかー……凄いなぁ。大変そう……ってか、どこで使うんだ?」
基本的にそんなものは教わらない。
子ども相手に情報収集する際、コミュニケーションスキルの有無が情報精度と量を変える。
子どもの心を掴めればその親や核心に迫る事が出来る。
調べ方を心得て、本物と偽物を区別する目があると知れば侮られないし、相手は敬意を持って協力する。
だから教えた。
教える意味が無い様で今正にそれが役に立っている。
重要なのは役に立つか否かではない。
役立つ様に使うか否か、それが『無駄でない』という前提に立ち、使おうとする思考にある。
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