会議は剣舞、ブレイクダンス、あるいはマムシュカ
「有難うございました。」
それぞれのお宝を一通り鑑定して、満足した3人がキラキラした笑顔で自分の宝物を眺めていた。
「皆さんの宝物、私はとても価値があると思います。
だからこそ、それらはどうか大事にしておいて下さい。武器に使うのは勿体ないです。」
にっこり笑って見せると、子ども達は大人しく宝物をしまった。
「さて、それでは作戦を立てる前に幾つか訊きたいことがあります。
オーイさんも協力をお願いします。」
「え…何するの?」
「森の中がどうなっているか?について教えて貰いたいのです。
オーイさんは元々の森を知っていましたし、皆さんはエルフごっこで知っているかもしれませんが、私はここに来る時、森に入らずにここまで来ました。
ですので、怪物退治をする前にどういった場所があるかを教えて欲しいのです。」
「地の利です。」
「その通りですチェルシーさん。
怪物に見つかって逃げる時にも役に立ちます。」
「逃げるの⁉怖いの⁉」
「怖いです。そして、大変な時は『逃げるが勝ち』と言います。
何より、作戦会議には地図が必要です。
アルさん、力を貸してもらえますか?」
「いいよ!」
「森いっぱい知ってるよ?先生?」
「はい、ベーターさん。教えていただけますか?」
「いっぱい?」
「はい、いっぱいです。よろしくお願いしますね、『先生』。」
そう言いながら折り畳まれていた大きな紙を取り出し、皆の前に広げる。
そこには元々この辺りを示していた地図を模写したもの……に手を加えたものだ。
学園の図書室には一国の地理が丸ごと記載された地図があった。それを使って周辺地理を予め模写しておいたのだが、森の形があそこまで変わっていたのでそのままでは役に立たない。
村を案内された時に村部分と地図の相違の確認をしてその部分には手を加えたが、森の中は知っての通り未調査。
何があるか分からない。そして『何かしらが居る』という前提を立てた上で闇雲に突っ込む事は愚策。
ここに3人。現在の森の状況を知っている人間がいるならば利用しない手はない。
何より、子どもの観察力記憶力というのは侮れない。
「ここにおっきい木!」「ここにエルフのむら がないのなんで?」「ここ紐 !」 「ここに生えている木は他より細いです。」「ここ、石ある!」「岩の実 はこの辺?」「トンネルです。ここにトンネルです 。」「えだやま!えだやま!ここにえだやまがない! 」「ゆーどらしる?ゆーどらしるいってない ?」「みずたまりです。こことここにみずたまりあるですよ。 」
「大丈夫モリー?これ分かんないでしょ?」
孫娘が前のめりな子ども達を見て苦笑いをする。
3人が各々好き勝手に先生し始める。
子どもは観察能力と記憶力に優れている。入力はあるのだが、出力時に独自の言い回しや表現が発生する。それを正しく拾えるか否か受容側の技術の見せ所だ。
致命的に誤った解釈をすれば実地でそれを知る事になる。そして、実地の環境次第では知る内容が死である事も視野に入れるべきだ。
現状は孫娘が思う程気楽ではない。命綱の無い綱渡りだとシェリー君は考えている。
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