一連の流れでとても大きくなっていく


 (救われた。馬車を大型にしなくて正解だった!)

 箱を目の前にして副会長ジャリスは歓喜していた。

 これだけなら面倒な申請やら何やらは必要無い。適当に加工して売っ払っておしまいだ。

 大型の熊やら鹿やら虫やらは都市間移動するとなれば申請やら税やら何やらが発生する上に他商会からあれこれ言われる探りを入れられるという面倒が発生するが、これはセーフ!セーフ!ナイスだイタバッサ!

 「ご苦労。ではそれは倉庫に取り敢えず保管しておいてくれ。最低限ダメにならない様な処理はしてあるのだろう?」

 「勿論。では、こちらは倉庫に。ついでにそのまま倉庫の整理をしておきます。」

 良かった。







 「今回は大型馬車が無かったので10m級三匹は数日後に届けて貰う事になっています。

 さて、三匹分のスペースを急ぎ作って申請書と売り手を探しませんと。

 ハァ…交渉役の飛び込みとは言え、20m級の最大個体を手に入れられなかった事は悔しい限りです。」

 肩を落として台車を押しながら副会長室から去っていくイタバッサを副会長は認識出来なかった。


・都市一個、一週間分の時間の対価。

・交渉して釣り合うように貰ってきました。

ここにある分は・・・・・・・全て1m級。

 この三要素でイタバッサという商売の悪魔が『木箱一つの品物で天秤を釣り合わせた』といいう希望は捨てるべきだったのだ。

 この後デザートワーム三匹が商会に運び込まれて地元が大騒ぎになり、他商会から探りを入れられ一目置かれ、副会長は書類に埋もれて泣き、イタバッサの宣伝でやって来る客が増え、デザートワーム加工品が商会の店頭に並び、副会長が阿鼻叫喚したのはまた別のお話。

 元学園長はもう叫ぶ力も無くなっていた。


 こうして、色々あって卒倒した副会長を見た従業員達の必死な嘆願があってモラン商会には万一の時の医療部門が設立する動きが生まれた

 薬剤の材料を採取し、調合し、品質管理をし、購入者に効能や注意点を説明・販売する。

 一連の流れを一商会で出来る事は強みであり、大規模な利益を生み出し、自然に商会に医療に精通した者を置いて、万一倒れた副会長を介抱出来る様になっている。

 後々これは莫大な利益を生み出すきっかけになるのだが、その際に設備投資に関する書類、薬の調合に関する公的機関からの査察、品質管理に購入時の対応審査等々……莫大な書類が発生し、副会長が『従業員に殺意を抱かれているのでは?』と疑心暗鬼に陥り、給与と福利厚生がアップし、従業員はやる気になって他から流れてくる人材が増えて、商会の評判が上がり、副会長がより可哀そうな事になるのであった。

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