朝食を頂きます
時間を元に戻す。商会に蠢くデザートワームが持ち込まれる前の話だ。
シェリー=モリアーティーが手紙を書いて、教授が追伸を書いて手紙を送った翌朝の事。
この辺りは地形のせいで日の出が僅かに遅い。そんな中でもシェリー君は夜明けの前に起床して、身支度を整えて勉強をしていた。
昨日の宴の最中、これからの食事については村翁のフォルダから話をされていた。
シェリー君はあろうことか自給自足を提案していたが、村翁がそれを全力で阻止。孫娘が運ぶ手筈となっている。
これに関してだけ、村翁を評価しよう。危うく廃棄された無人島での生活を疑似体験するところだった。
日常的に早起きが身に染み付いているシェリー君。何もなくとも起きてしまって手持無沙汰になって、勉強中という訳だ。
「モリー、おはよー。起きてる?朝ごはん持ってきたけどどう?」
鍵のかかっていない扉からノック音と間延びした声が聞こえる。
「おはようございます。オーイさん。先程目覚めたところです。」
つっかえ棒を取り外して扉を開く。
編み籠に布を被せた物を持った孫娘が立って居た。
そして、その背後に3人ほど小さいのが隠れていた。
「あー……子どもって稀に超早起きするよねー。明日雪って時とか、明日遊びに行くって時とか、めっちゃ早起きするか眠れないかの二択になるよね……。」
孫娘が頭を抱えている中、3人の子ども達が孫娘を襲撃。籠をひったくってシェリー君にぶつかってくる。
「作戦会議‼」
「怪物退治いつ?作戦は?さーちあんどですとーろ?」
「お邪魔しますです。」
毎日三食と十分な睡眠。何をするにもそれが最も大事だ。
「おーい君達ぃ、朝ご飯を奪ってそりゃないだろー。
モリーはご飯未だなんだから。」
「持って来た!」
「一緒に食べない?」
「僕達も食べていないです。一緒に食べて作戦会議するです。準備万端です。」
3人とも懐から各々の食事を取り出して見せる。
「お邪魔します!」
「手洗う場所借りてもいい?」
「テーブルに座って皆でご飯です。」
孫娘とシェリー君を放置。あっという間に家に入り込んで自分達の食事とひったくった籠、それと子ども達にとっての怪物退治のアイテムを広げた。
手を洗って広げるまでの手際が異常に良い。シェリー君に用意された籠を、勝手とは言えテーブルに広げてシェリー君の食事の用意までしている。
この歳で食べ散らかすどころか食事の準備までするのはマナーとして合格と言える。
「さぁ、お嬢様!」
「一緒にお食事如何でしょうか?」
「ご一緒失礼するです。」
3人ともテーブルを指し示してお辞儀の真似事をする。
「また騎士ごっこかよ…あー、モリー…私も一緒に食べて良い?」
「どうぞ。皆さんで一緒に食べて、その後会議をいたしましょう。」
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