第一から第三村人まで

 「どちらかと言えばこちらの方が幽霊でも出て来そうな雰囲気だな。」

 「教授!」

 ただでさえ廃村状態に加えて子ども達が遊んでいる姿しかないのが不気味さを加速させている。

 が、ここで貢献と淑女を見せる事が出来るかどうかが問題だ。

 はてさて、足の生えた大人と話がしたいが……

 「こんにちは。ごめんなさい、今日ここに課題で来たんですけれど、大人の人は居ませんか?」

 シェリー君が子どもにいつの間にか声をかけていた。

 見ず知らずの相手に興味津々といった顔でこちらに走ってくる。

 「なになに⁉おねえちゃんだれ⁉知らない人⁉」

 「よそから来たの?何をしに来たの?」

 「あ、大人達が言っていたお姉さんです?大人達なら村のみんなのばしょに居るです。

 案内するです。」

 ニコニコした子ども達に手を引かれ、シェリー君は村を通り抜けていく。

 道の左右の宿屋が民家に変わっていく。

 とは言え誰も住んでいない廃墟から誰かが住んでいる古びた家になっただけ。

 見ての通り、予想通り、栄えている訳がない。

 宿が潰れて外部からのアクセスが塞がれて、外部からの物資や通貨獲得は困難となった。

 元々の産業として畜産とキノコ産業があるが、未だに三人組が数年前の噂を覚えている時点でお察しだ。要は風評で売れない。ただ、不幸中の幸いとして宿以外に食料の生産を行っていた事で仕事が完全に無くなってしまった訳ではない。と言っても、結局不幸の只中で楽観要素は無い。

 既に現場を見ている。未だ人からの情報は得られていないが、懸念材料と使える駒は徐々に手元に。

 さて、如何動いていくか?


 「あれです。皆あそこで話してるです。」

 引いて行かれた先にはほかの建物より一層古い木造の大きな平屋、集会所の看板が掲げられている。

 「遊ぼ!遊ぼ!遊ぼ!何して遊ぶ⁉」

 「忙しくないです?いつ遊べます?」

 子どもたちが大人の方へ向かうシェリー君に不安そうな目を向ける。

 閉鎖集落に現れた見知らぬ客人。そして客人は大人の様で子どもの様で、子どもの視点ではシェリー君がどちら側か区別出来ていない。

 ここで大人の集団の象徴に入っていく事で『自分達とは違う子どもじゃない』・『遊んでくれないかも』という思考が今彼彼女らの頭には浮かんでいる。

 「少し、お話をさせて下さい。挨拶は大事でしょう?お姉ちゃん、頑張ってお勉強を終えたら必ず一緒に遊びますから。

 そうしたら一緒に遊んで下さい。」

 その一言が表情三つを曇天から快晴へと変えた。

 「待ってる!絶対来て!絶対絶対絶対絶対!」「約束です。待ってるです。」「何して遊ぼう?何が楽しい?何好き?」

 三人に囲まれて揺さぶられる。

 「頑張ってきますね。

 あと、私は皆で楽しく遊ぶのが大好きです。」

 そう言って手を振り、集会所の扉を叩いた。

 「ごめん下さい。今日からお世話になるアールブルー学園のシェリー=モリアーティーです。」

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