電撃作戦(若干物理的)



 こういう訳で、警備官達を説得。

 その後に間者スパイの手引きで賊の出現場所を特定。モラン商会の協力もあって大規模制圧作戦が行われて、時間が現在まで進んでいった。


 襲撃を返り討ちにされてお縄になった実行犯の盗賊達はぐったりとしながら警備官達の檻付き馬車に次々放り込まれていく。

 予め聞いていた首輪の爆弾の無効化装置と警備官達が装備している鎧と武器はモラン商会謹製の非殺傷制圧用装備。

 軽量かつ腐食し難い金属の鎧で機動力を確保しつつ間合いに入り、武器から発せられる微弱な電撃によって一時的に行動不能にして制圧する。

 単純明快。ただし触れるだけで相手を無力化出来るという性能故に『無力化して誘拐』・『無力化した隙に致命傷を与える』等の悪用を懸念した会長から制作方法や設計図・設計に必要な設備の徹底管理。原則は貸出を基本として、特別な場合に購入する際も徹底した身元調査・証明を行った上で、製品自体には改造を許さない厳重な出力制限を施した上で受け渡し、メンテナンスを行う様に厳命されている。

 実際、大規模な盗賊制圧作戦を行って相手が激しく抵抗したものの、擦り傷程度の些細な怪我を除いて無事双方医者要らずの結果となった。


 盗賊達の確保と彼らに囚われた人質の保護は完了。そしてここからはもう一つの問題に取り掛かる。

 『サイクズル商会』

 盗賊達と手を結んで自分達の安全を保障、そして商売敵を狙わせた挙句に不要な人材を盗賊へと売り渡す事で不要と断じた人間を捨てつつ自分達も盗賊の被害者と偽装する悪辣過ぎる手法は最早悪徳商人とは呼べず、犯罪者集団のフロント商会と言った方が相応しいと感じてしまう。

 そして、悪趣味ながらも巧みなそのシステムを確立した相手に対して正面から逮捕しに行くという悪手を打てば逃げられる事は必至。

 盗賊の制圧を行うと同時に、商会も同時に素早く、確実に、逃げ場を無くして逮捕する。


 「おいおい、手前、死んだんじゃねぇのかよぉ?」


 サイクズル商会から警備官二人に連れられて歩く男が店外で待っていた男の姿を見て少しだけ驚いていた。が、直ぐに表情が真顔に変わる。納得した。

 何故逃げようとした時に商会の隠し通路が使えなかったのか?

 何故シラを切った時に的確に無駄無く隠していた裏帳簿や魔道具といったやった事の証拠を暴いて見付けられたのか?

 隠し通路も証拠も何もかもを知っている男、殺し屋に殺されてもう無くなった筈の男が警備官向こう側に居たからだ。





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