コズマ=ボンノーの伝説 11章
発見した方法は簡単だ。情報屋に金を握らせて警備官が気に入らないと常々ほざいていて、かつ女子どもにまでちょっかいを出す様なアホの名前をリストにさせた。
自分がやると拡散して、堅気相手に手出しして、おまけにしくじって……ドが付く阿呆素人の手口だ。身元を隠してのけるなんて曲芸、出来やしない。
あとはそいつらを全員で全員を捕まえて締め上げて、やったかどうかを締め上げて聞いた。知らない奴からも情報があれば絞り取った。兎に角総動員して警備官の妻に手を出す
呆気無いほど簡単に見つかったよ。何せ『隠そう』という意思が無かったから。
本人を捕まえに行ったら、『オレサマをスカウトしに来たのか?』・『金を出すなら従ってやっても良い』・『直にオレサマの天下になる。俺の下に付こうって殊勝なお前はツイてる。』とほざいていた。そこまでは聞こえたが、次に何をほざきたかったかは知る訳がない。聞くに堪えない自惚れを口にさせる前に顎を砕いて腹をしこたま殴ったからだ。
俺達は外道だ。道を外れてやくざな生き方と生き恥を曝す大馬鹿者達だ。
暴力を手段として迷わず使う。人を泣かせても、その直後には何食わぬ顔で飯を喰ってられる屑野郎達だ。
だからこそ、だからこそだ。道を外れてルールなんざ糞喰らえと吠えるからこそ、死んでも守るべき仁義はある。
手前よりも図体が小さくて膂力の弱い奴相手に暴力でモノを言わす。
手前が気に入らない相手を潰す為にソイツが強くて自分じゃ敵わないからとソイツの大事な奴に手を掛ける。しかもそいつは自分より力の弱い奴と来てる。
ソイツは外道でもなければ屑でもない。そして、ボスはそういう奴を決して許さない。だから俺も許さない。
本当なら絞め殺して首から下は刻んで裏通りの犬の餌、頭だけその辺の堅気が来ない場所にでも晒したいところだが、それはコイツと同格の屑になる。
ボスは俺にそれを望まない。
コイツを警備官の所に投げ捨てる。それも考えたがダメだ。わざわざ死ぬ事が分かっててそれをやるのも許さないだろう。
面倒だが、少し捻った方法で解決するか。
右手で掴んだド阿呆が鼻血を出してうわ言をほざいていた。
「ブチ殺せ!」
癇癪を起こした男が鞭を振り回して部下と首輪を付けた猛獣や人間に喚き散らす。
鞭が弾ける音で肩を震わせた人間達はより恐ろしいものを避ける為に一人の怪物へと向かっていく。猛獣達も同様にその爪や牙を容赦無く自分より小さな生き物に向ける。
しかし、その全てが途中で足を止めた。
目の前の最早人間性を喪失した人間の殻を付けた怪物に臆している。コイツに牙を向ければ最期だと本能が知らせて止めさせる。
それに気付いていないのは鞭を持った無知な阿呆だけ。
怪物は猛獣と人の方へゆっくりと歩いていく。
恐れをなした生き物達は彼の為に道を作り、横へと
ソイツらには何もしない。怪物は抵抗しなければ、敵対しなければ危害を加えないようだ。
逆に今、鞭を振り回して危害を加えに行った男は鞭を掴まれて振り回されて地面に叩き付けられた。
これまでの被害状況、今見た光景、確信が持てた。奴にはまだ理性がある。これなら『作戦』は上手く行きそうだ。
「あの阿呆はもう送ったな?」
「勿論です、言われた通り、ふん縛って手紙を添えて急ぎで投げ込んどきやした。」
隣で一緒に息を潜めて事の顛末を見ていた部下に問いを投げかける。望んだ答えが返ってきた以上、あとは丁半だ。
「矢張り俺が行った方が良いんじゃないでしょうか?」
部下が上ずった声でそう言った。
ビビった声を出すなと叱責したいところだが、今回に限ってそれは出来ない。
「『部下を死地に放り込みたければ先ず自分が死地に行け。』
それがボスのお言葉だ。お前はこの場で待機しておけ。」
息を深く吸って立ち上がり、魔法を使う。
自分の頭で描いた容姿を自分の容姿の上に貼り付け塗り潰すだけのハリボテの魔法が発動した。
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